FFだったらインプレッサを買ったほうがいい!? 悩ましすぎる新型クロストレックの選び方を考えてみた (2/2ページ)

タイヤサイズによる違いは大きい!?

 まずは価格だ。AWDモデルを例に挙げると、ツーリングはかなりリーズナブルと思える288.2万円。リミテッドは328.9万円。差額は40.7万円と小さくない。が、クロストレックのインテリア、インパネデザインを完結する縦型11.6インチセンターインフォメーションディスプレイ&インフォテイメントシステム装着前提なら、驚くことはない。リミテッドにはそれが標準装備され、ツーリングとの実質的な差額はグッと縮まるのだ。その上で、クロストレックの足もとを引き締める18インチタイヤ&ホイールなどが標準装備されるのだから、リミテッドは決して高すぎはしない。

 では、リミテッドとツーリングで異なるタイヤサイズによる乗り味はどうなのか? 乗り心地は17/18インチタイヤを問わず、どちらも文句なしに素晴らしく快適だ。シートの分厚いクッション感、適切なホールド感もあり、高級車さながらの路面に左右されにくい、大げさに言えば“魔法の絨毯に乗っているかのような”乗り心地を示してくれる。初試乗した際、まず驚いたのがその乗り心地の素晴らしさだった。アクセル踏むとスッと濃厚なトルクがリニアに沸き上がり、ペダルコントロール性に富み、中高回転域の気持ち良さある水平対向2リッターエンジン+モーターによるマイルドハイブリッドのパワーフィール、特筆すべきロードノイズの遮断性能やルーフへの高減衰マスチックシーラー採用による車内の静かさといった点も、リミテッドとツーリングで変わりようもない美点と言える。

 が、タイヤサイズによる乗り味、操縦感覚はけっこう違う。18インチタイヤを履くリミテッドは濃厚にして落ち着き感、穏やかさある上質なドライブフィールが。17インチタイヤとなるツーリングは同じAWDモデルとの比較で言えば、より軽快感ある加速フィール、操縦性、一段としなやかかつ、いい意味でおおらかな乗り味、ドライブフィールが特徴となる。可能なら、両モデルに試乗することをおすすめしたい。結果、ツーリングの走りのテイストが好みなのであれば、必要なOPを選択していけばいい。

 では、先代XVになかったFWDの選択はどうか。「街乗り、オンロードメインの使い方だから前輪駆動で十分……」というのであれば、悪路の走破性、最低地上高にこだわる必要はなく、クロストレックのFWDもアリだが(4WDとの燃費差は微小)、個人的には立体駐車場への入庫容易性も高まる(全高はクロストレックの1575mmに対して1515mm)、スポーティな走行性能にも大満足できるインプレッサ(クロストレックのベース車)のFWDでいいようにも思える。カタチだけどうしてもクロスオーバースタイルじゃなきゃダメ、というケースを除けば、であるが。

 新型クロストレックの真打ちがAWDだとすれば、あとはツーリングか、リミテッドで悩むだけ。実際の販売では半々とのことだが、ツーリングに11.6インチセンターインフォメーションディスプレイ&インフォテイメントシステムなどのオプションをあれこれ付けていくのであれば、いっそ、将来の下取り価格の優位性も期待できるハイグレードのリミテッドを選ぶのが、正解だと思える。ちなみにサンルーフはリミテッドにのみ選べるオプションだが、前席は気にならないものの、後席は頭上空間が狭まる印象だから、実際にショールームなどでサンルーフ付きのクロストレックの試乗車の後席に座ってみることをすすめる。身長172cmの筆者の場合、ドラポジを決めた運転席背後の膝まわり空間は210mmとたっぷりなのだが、頭上空間は100mm(低全高クロスオーバーSUVのホンダ・ヴェゼルのサンルーフ付きとぴったり同じ)。サンルーフ装着のために天井が下がって見える前方面積が多いため、身長、座高によっては天井が低く感じてしまう可能性がある。

 とはいえ、駆動方式、グレードを問わず、マイルドハイブリッド1種類となった水平対向エンジンの気持ち良さ、静かさ、特筆すべき乗り心地の良さを味わうことができるのが、お値打ち価格の新型クロストレックと言っていい。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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