いま「スーパーハイト軽自動車」がバカ売れする理由! 売れども「メーカー」も「ディーラー」も苦しくなる裏事情も (2/2ページ)

スーパーハイト軽がミニバンの代わりに

 軽自動車のスーパーハイトワゴンは、後席が広く、格納すれば自転車も積める大容量の荷室になる。乗車定員は4名でも、実用的にはミニバンの代用品になり得る。売れ筋の価格帯も前述の通り200万円以下だから、以前のノアやステップワゴンが、いまはホンダN-BOXやダイハツ・タントに切り替わった。

 そして3つ目の理由で示したとおり、メーカーには「国内市場は軽自動車に任せておけばいい」という考え方もあるから、ますます軽自動車の販売比率が高まる。その代表がN-BOXだ。2022年1〜5月に、国内で新車として売られたホンダ車のうち、N-BOXが40%を占めた。これでは何らかの理由でN-BOXの生産が滞ると、国内で売られるホンダ車が半減する。経営的には危うい状態だが、ホンダは抜け出せない。2011年にN-BOXを投入して大ヒットして以来、そこに安住してきたからだ。

 ホンダの国内新車市場における軽自動車比率は、2022年1〜5月は57%に達する。ほかのメーカーも、日産の軽自動車比率は40%に達して、三菱も49%だ。日産ではルークス、三菱はeKクロススペース(現在のデリカミニ)が売れ筋で、各社ともにスーパーハイトワゴンの人気が高い。

 スーパーハイトワゴンに次ぐ売れ筋タイプが、全高を1600〜1700mmに設定したハイトワゴンだ。スズキ・ワゴンR、ダイハツ・ムーヴ、ホンダN-WGNなどが該当して、軽乗用車全体の20%以上を占める。そこにスーパーハイトワゴンも加えると、軽自動車の70%以上が、背の高い車種で占められるわけだ。

 これらの軽自動車を運転すると、販売が好調な理由が理解できる。運転のしやすい小さなボディに優れた上質感と実用性を凝縮させ、「これで良い」ではなく「これが欲しい」と感じさせる。

 ただし軽自動車は1台当たりの儲けが少なく、軽自動車比率が高まるほど、メーカーや販売会社の立場は辛くなっていく。ホンダや日産は、自分達のためにも、日本のユーザーに喜ばれる小型/普通車をもっと積極的に開発すべきだ。軽自動車は日本の使用環境に合ったカテゴリーだが、それだけですべてのニーズを満たせるわけではない。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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