最近の車内は「無言」が基本? タクシードライバーが「客と会話」をしなくなったワケ (2/2ページ)

ドライバーは会話の内容にも配慮

 そもそもタクシー運転士が新人研修を受けるときには、「乗客と話をしてもよいが、プロ野球と政治の話はするな」と教えられるようだ。乗客が応援しているチームを運転士がこき下ろせばたちまちトラブルとなる。政治でも支持政党などが異なればたちまちトラブルとなるので、世論を二分するような話題は極力避けるようにとされている。ただし、タクシーの車内というのは不思議な空間であって、ときどき初対面の運転士に人生相談や、自分のごくプライベートなことを話してくる乗客も意外なほど多いようである。

 ただし、現状の世の中は分断化が進み、ジェネレーションギャップも以前より激しくなってきている。女性の乗客ならば、何気ない男性運転士の発した言葉によりセクハラに発展するなど、会話さえしなければトラブルにならなかったといった事案が増えているようである。

 筆者は自宅最寄り駅からタクシーによく乗るので、何人かの運転士さんと顔見知りになっている。タクシーに乗り込むと、「久しぶり」とか「今日は早いね」などとまず声をかけてもらい、車内での会話も弾み、自宅近くになると「いつもの場所でいいんだよね」と言ってくれ、いつもの場所にタクシーを停めてくれる。いい歳したオッサンである筆者は、このようなやりとりは親しみもあって好感がもてるのだが、年頃の女性ならば恐怖に感じてしまうだろう。価値観など世の中が多様化し、そして何かと物騒になってくると、同じことでも受け止める側次第でずいぶん印象が変わってくるのがいまの社会なのである。

 もちろんタクシー運転士も誰でも乗客なら話しかけるというわけではない。そこはプロなので、乗り込んできたお客の様子を見て、「この人なら大丈夫だろ」と思ったら、最初は天気の話題などをふって様子を見ながら話しかけるようにしているとも聞いたことがある。

 ちなみに筆者は海外出張のときもタクシーをよく利用するのだが、英語が公用語として広まっているインドやアメリカなどではまだなんとか対応できるが、中国やタイ、インドネシア、ロシアなどでは現地語でタクシー運転士から話しかけられて困ってしまうことがある。

 ただ、文明の進化はありがたいもので、いまではスマホの翻訳アプリなどでコミュニケーションが取れる時代になったので、道中を結構楽しく過ごすことができるようになった。治安のよくないアメリカでは、原則そのようなことはまずないのだが、運転士から「助手席に座れ」と言われ座らされ、目的地までしゃべり続けたこともある。筆者は国内外問わず話しかけやすいキャラクターなのかもしれない。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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