ホントに走り以外「どうでもよかった」が伝わってくるホンダ「タイプR伝説」5つ (1/2ページ)

この記事をまとめると

■ホンダのタイプRは初代NSXに設定されたNSX-Rから始まった

■当初は手組みのエンジンや軽量化、エアコンレスとスパルタ過ぎる本気仕様だった

■軽量化などを行うのが難しい現在でもできる限り手を入れ、タイプRらしさを保っている

日本の至宝「タイプR」の伝説を振り返る

 ホンダのレーシングスピリットを象徴する存在として、すでに30年以上の長きにわたり愛され続けている「タイプR」。1992年の初代NA1型NSX-Rから始まった、このホンダ謹製ストリートリーガルレーシングカーは、それまでの市販車では考えられないような手法を数多く積極的に採り入れてきた、まさに革命的なスポーツカーと言えるだろう。

 その黎明期にはとくに事欠かない、そんな「タイプR伝説」の数々を、ここではご紹介したい。

1)手組み&ポート研磨!

NSX(NA1/NA2)
インテグラ(DC2/DB8)
シビック(EK9)

 F1初優勝を遂げたレーシングカー、RA272の日の丸カラーをモチーフとした、赤のHマークエンブレム(通称「赤バッジ」)と、「チャンピオンシップホワイト」のボディカラー。タイプRが核とするホンダのレーシングスピリットを、ビジュアル面で表現するのがこれらだとすれば、メカニズム面でもっとも色濃く体現するのはやはりエンジンだろう。

 NA1/NA2型NSX-Rでは、熟練した技術者の手により、クランクシャフトの回転バランス取りや、ピストン・コンロッドの重量バランス取りといった、レーシングエンジンさながらのチューニングが施されている。とはいえNSX-Rは、専用の工場で生産されるスーパースポーツの、車両本体価格1000万円前後という特別なエボリューションモデル。感心こそすれ驚きはしない、というのが本音ではなかろうか。

 だが、DC2/DB8型インテグラタイプRやEK9型シビックタイプRという、車両本体価格200万円前後のモデルにも、バルブシート加工後のポート内段差を手作業による研磨で取り除く工程が採用された。これが多くのクルマ好き、スポーツカーファンに大きな驚きを与え、タイプRを象徴するトピックとして賞賛されたことは、30年近く経ったいまなお記憶に新しい。

 この手作業をはじめとした細部にわたるチューニングの結果として、DC2/DB8型インテRのB18C型 96 spec.R/98 spec.Rは200馬力/8000rpm、EK9型シビックRのB16B 98 spec.Rは185馬力/8200rpmと、それぞれリッター111馬力、116馬力という、NA(自然吸気)エンジンとして驚異的な高出力を実現。

 これがサーキットでの速さのみならず、従来のDOHC VETECエンジンをしのぐ高レスポンスと、より甲高く官能的な「ホンダミュージック」をもたらしたことも、衝撃と絶賛の嵐を呼んだ。

2)グラム単位の軽量化!

シビック(FD2)以前のタイプR全車+シビック(FK8リミテッド)

 エンジンと並びメカニズム面で「タイプR」を体現するもの、それは「走る・曲がる・止まる」のすべてに大きな影響を及ぼす、軽量化だ。

 コスト面での制約が少ないスーパースポーツのNSX-Rでは、CFRP(炭素繊維強化樹脂)やアルミニウム合金など軽量素材への置換も積極的に行われているが、NSX-Rはもちろん、それ以外の比較的手の届きやすいタイプRも、軽量化策はさまざまな部分で行われている。

 たとえば、バネ下重量軽減に加えブレーキ冷却性能向上にも配慮した専用設計のアルミホイールを採用するほか、軽量フライホイールの採用、バッテリー小型化、遮音材の省略、快適装備のオプション化など、グラム単位の軽量化を敢行。NA2型NSX-Rではベース車に対し約130kgもの重量を削減した。

 また、タイプRの設定を前提とした車両開発が行われ、ベース車に対する劇的な軽量化が困難とされる近年のモデルでも、先代FK8型シビックRの限定車「リミテッドエディション」では、BBS製鍛造アルミホイールの採用や一部遮音材の削減により、ベース車の「ハッチバック」ではなくカタログモデルのタイプRに対し、約23kgもの軽量化を実現している。


遠藤正賢 ENDO MASAKATSU

自動車・業界ジャーナリスト/編集

愛車
ホンダS2000(2003年式)
趣味
ゲーム
好きな有名人
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