使わないときは降ろしちゃえば便利なのになぜ? 日本に「シートが外せる」ミニバンがない理由 (1/2ページ)

この記事をまとめると

■ミニバンのシートアレンジによる大容量な荷室スペースは魅力的

■3列目席を畳んでもシートの大きさ分は荷室スペースに影響する

■国産車ではシートの脱着を前提で作られたクルマはないが輸入車には存在する

シートアレンジよりも外したほうが荷室の使い勝手はいい

 空前のアウトドアブームの今、クルマの使われ方も大きく変わっている。そう、アウトドア派にとっては、より荷物をたっぷり積めるクルマが求められているのだ。そこで注目されるのが、アウトドア=SUVという概念の先にある、アウトドア=ミニバンである。

 つまり、3列目席を格納した、SUVに勝る大容量で高さのあるラゲッジルームが重宝される。が、しかし、大容量ミニバンであるボックス型ミニバンのほとんどの3列目席は左右跳ね上げ式格納であり、幅方向が制限され、荷物の積載能力としては効率的とは言えない。

 ステップワゴンやオデッセイのような3列目席床下収納式は、3列目席格納時のラゲッジルームの容量は稼げるものの、転がりやすいものの収納や汚れものの一時収納に便利な床下収納がないのが難点。

 では、いっそ、ミニバンの3列目席を取り外してしまえばいいじゃん…と思うかも知れないが、そう簡単な話ではない。もし、7人乗りミニバン(2-2-3席)の3列目席を外してしまうと4人乗りになってしまい、乗車人数が変わるため、車検は通らない。どうしても外しっぱなしにしてラゲッジルームを拡大したいというなら、使用者は使用の本拠の位置を管轄する運輸支局などに構造変更後のクルマを提示して構造等変更検査を受けなければならず、つまり「構造変更届」の手続きを行わなければならないのだ。やっかいなのは、今度のドライブでは7人乗るから、3列目席を取り付けて元に戻してしまおう……とはいかないこと。構造変更後の乗車定員は4人だから、7人乗ると違反になってしまうのである。

 よって、とくに車検のある国産車では、シートを簡単に取り外せるクルマは見当たらないということになる。もっと言えば、日本の住環境では、外したシートの置き場に困るのも、脱着式シートが市民権を得られない理由かも知れない。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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