ユーザーに合わせた4種類のクラウンを用意する「クラウン群」
こうしたクラウンブランドの変貌の背景には、いったい何があるのだろうか。
製品企画の観点からは、日本のみならずグローバルで乗用車に対する市場の価値観が大きく変わったことが挙げられる。きっかけは、2010年代半ば以降にドイツメーカーを基点で始まった、CASEシフトだ。改めてだが、CASEとは、通信によるコネクテッド技術、自動運転技術、シェアリングなど新しいサービス事業、そしてEVを筆頭とする電動化である。そのため、自動車メーカー各社はブランド戦略を大きく見直す必要が出てきた。これまでの延長上ではなく、ヘリテージ(歴史)に裏打ちされた新たなる製品性が求められるようになったと言える。
そうしたなか、トヨタが近年打ち出しているのが「群(ぐん)」という考え方だ。例えば、「ランドクルーザー」は、先に発売された「300」に次いで「250」が登場した時点でさらなる多モデル化を踏まえて「ランドクルーザー群」という発想を披露している。
次いで発表された「センチュリー(新モデル)」の場合、従来の「センチュリー」に加えて、「アルファード/ヴェルファイア」、さらに「クラウン セダン」も含めて、「ショーファーカー群」という括りで紹介されている。
クラウンについては、現在公開されている4車系が「群」であるが、今後さらなる「クラウン群の新モデル」登場についても、現時点で製品企画が進んでいるかどうかは明言していないが、トヨタ関係者はその可能性を否定していない。
こうした「クラウン群」という観点で見れば、クラウン専門店「THE CROWN」が立ち上がり、クラウンファンのよるコミュニティを生成するといったブランド戦略の方向性について、ユーザーの納得がいくところではないだろうか。
むろん、レクサスとのすみ分けは必要だ。この点について、THE CROWNをいち早く展開する、神奈川県のウエインズグループ関係者は「すみ分けは可能であると想定しており、そのように事業を進める予定」と今後のビジネス戦略を語っている。
THE CROWNの今後の動向に注目したい。