気がつけば消滅! 「明るい」「キレイ」で人気だった「HIDヘッドランプ」はなぜLEDに負けたのか (2/2ページ)

LEDが普及したいまではメリットがあまりない……

■「HID」の良くない(劣っている)ところは?

「HID」が「LED」より劣っているところを見ていきましょう。

・電力消費量

 どれだけ電気を使うかを表すワット数で比べると、「HID」が35Wと55Wの2種なのに対して、「LED」は20〜45Wとなっていて、実用照度で見るとLEDの方がワット数を抑えることが出来ます。「ハロゲン球」の2倍と謳われた「HID」ですが、同じくらいの明るさで比べると「LED」の省電力性にはかなわないようです。

・寿命

「ハロゲン球」の600〜800時間に対して2倍の2000時間以上という長寿命を誇っていた「HID」ですが、「LED」はその20倍以上の4万〜5万時間と言われており、使用状況の違いや製品の誤差はあるものの、比較するのもナンセンスというレベルになっています。

・装着のしづらさ

「HID」は前述のように「イグナイター」と「バラスト」を必要としますので、設計段階でその設置スペースを確保しなくてはなりませんし、部品が増えるということは故障の原因が増えることになりますので、信頼性の確保にコストがかかります。ユーザーとしても故障原因の候補が3つあるのは煩わしいですね。これが「LED」なら「バルブ」のみ、あるいは小さい「コントローラー」があるだけなのでだいぶ管理が楽になります。

LEDバルブ

 ちなみに「HID」で球切れが起きたとき、社外品に交換する場合に注意しなくてはならないのが、「バラスト」とワット数を合わせる必要があるという点です。先述のように「バラスト」には消費電力を一定値に制御する役割があるので、異なるワット数のバルブと組み合わせると、過電流などのトラブルが発生する恐れがあります。

・起動(発光)の遅さ

「HID」はその発光の仕組み上、光量が安定するまでに少し時間がかかるのが欠点です。実際に経験した人はわかると思いますが、体感で1〜2秒といった感じでイラつくほど遅くはありません。ただ、パッシングなどの一瞬作動させたい場合には向いていません。それもあってハイビーム側は「ハロゲン球」を組み合わせたヘッドライトが多かったわけですが、なかには特別感を高めるために、冒頭で触れたハイビームも「HID」にした「バイキセノン」という仕様もありました。

■結論:「HID」が使われなくなった理由とは?

 まず、上の良い点と悪い点の項目数の違いを見てください。これだけ見てもデメリットの方が多い印象は確定なので、「これでは使われなくなって仕方ないか……」と納得できると思いますが、現行のクルマに乗っていて実感するのは、「HID」ライトがいまの自動運転に向けた進化に合致できないのではないかということです。

 とくにわかりやすいのは、ヘッドライトの自動制御機能です。明るいときはオフで、トンネルや暗い場所では自動でオンにしてくれるシーンに出くわした場合を考えてみます。ピーカンのときはトンネルに入った瞬間に視界が一瞬奪われる感じがするくらいに暗さを感じます。「LED」なら瞬間にパッと照らしてくれるので便利だと感じられますが、「HID」に置き換えてみると1〜2秒のタイムラグでも不満に感じるでしょう。

オートヘッドライト

 また、夜間のハイ/ロー自動切り替え機能でも同様です。一瞬で光量が立ち上がる「LED」または「ハロゲン」は切り替えても暗い時間がほとんどありませんが、「HID」は切り替えるたびに暗い時間が1〜2秒生じることになります。これでは使いものにならないでしょう。

 少し寂しい感じではありますが、いずれは「エイチアイディー? ああ、そんなライトもあったなぁ」と言われることになってしまうでしょう。技術の進化は留まりも逆行もしないのですから。


往 機人 OU AYATO

エディター/ライター/デザイナー/カメラマン

愛車
スズキ・ジムニー(SJ30)※レストア中
趣味
釣り/食べ呑み歩き/道の駅巡りなど
好きな有名人
猪木 寛至(アントニオ猪木)/空海/マイケルジャクソン

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