残価設定ローンに陰り! いま新車購入で「現金一括払い」が増えていた (2/2ページ)

納期安定化のトヨタの秘策「J-SLIM」

 しかし、ここ最近では納期が突然早くなるケースも多くなってきている。たとえば発注時に納車まで1年ほどかかるとされていたのに、しばらくすると半年後に納車可能となるケースが意外なほど目立つというのである。納車が早まるのは本来歓迎すべきことなのだが、納車が半年も早まると、予定していたよりも残債が残ってしまい、下取り査定額での残債相殺が難しくなり、そもそもの支払い条件に大きな狂いが生じてしまう。

 それでも少し前まではディーラーでも、下取り査定額の上乗せなどでできるだけ支払い増を抑えようと調整していたようだが、すでに新車販売による利益がここのところの生産コストの上昇でますます減っており、調整すら難しい状況となってきているのである。

 セールススタッフも商談でそのようなリスクについての説明は行うが、先々が読みにくいなかでは残価設定ローンの利用は難しいとして、定期預金を崩したり、ディーラーローンではなく金融機関などのオートローンを利用して現金にて新車購入代金を支払う人が目立ってきているようである。

ディーラーのオートローンのイメージ

 世界情勢の混迷や日本国内の政治不信などもあり、多額の現金を手元に置きながらも、ローンを利用する人が多いといった、いまのディーラーローンの使われ方の傾向を反映した動きのようにも見える(いざとなったら現金一括払いもできる)。

 一般論からいえば、手持ちの現金に余裕があるのに、わざわざ金利を払ってまでディーラーローンを利用するのだから、このようなお客は「上客」ともいえ、セールススタッフも仲介するローンを扱う信販会社からのマージンがもらえなくなるので、現金一括払いが目立ってくるのは販売現場としては少々困った傾向と捉えているようである。

 トヨタではすでに「J-SLIM」という新たなシステムを導入し、今後は本格的に受注から納車までを集中管理することになるので、いままでのような突発的な納期の短縮などの混乱は頻発しないようだが、すでに消費者や販売現場では、不安定な納期により起こりうるリスクとして認知が高まっており、現金一括払いという自衛手段を取る購入者も増えている様子。

トヨタの「J-SLIM」を発表している写真

 当然現金一括払いのほうが残価設定ローンを利用して乗っているユーザーよりは流動性(他メーカー車へ流れる)は高まることにもなるだろうから、これまで同様に残価設定ローンを利用してもらえるかどうかは「J-SLIM」による安定して信頼性の高い配車及び納車の担保にかかっているようにも見える。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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