三菱自動車の中国からの撤退を「ネガに報じる」のは間違い! 「EV競争での負け」じゃなく選択と集中の結果 (1/2ページ)

この記事をまとめると

三菱自動車は広州汽車との合弁事業を解消して中国市場からの撤退を発表した

■東南アジアやアメリカ市場での三菱自動車の売り上げは堅調で、単に「選択と集中」を進めたように見える

■中国撤退は今後の状況次第では適切な企業判断だったと評価されることになるときがくるかもしれない

大きく報道された三菱自動車の中国市場からの撤退

 三菱自動車は、10月24日に中国市場において広州汽車集団股份有限公司(以下広州汽車)との合弁事業を解消し、中国市場からの撤退を正式に決めた。

 おりしも「東京モーターショー」から名称を変えた「ジャパン・モビリティ・ショー」正式開幕前のメディアデー(10月25日)を控えての正式発表となった。

 報道では、この三菱自動車の決断と絡ませるように、中国市場における日本車全体の販売苦戦を取り上げていた。中国市場は中国地場メーカーを中心にBEV(バッテリー電気自動車)の販売に積極的であり、新車販売全体の約3割がBEVなどのNEV(自然エネルギー車)となっている。NEVラインアップに日本車が出遅れていることもあり、日本車が中国での販売に苦戦しているとのロジックであった。

BYDの日本導入発表会の様子

 ここ最近の日中関係といえば、東京電力福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出に激しく中国政府が抵抗し、日本からの海産物輸入を全面的に停止、中国国内でも処理水放出に反対するさまざまな動きが先鋭化するなど、反日的な動きも目立っている。ある事情通に聞くと、「そのような環境で新車を販売していくのはかなり厳しい」と語ってくれた。このような直近の出来事も、三菱自動車の判断を後押ししたのかもしれない。

 過去にも中国国内ではいわゆる「反日運動」が先鋭化し、そのたびに日本企業は不買運動に翻弄されてきた。日本だけではなく、韓国が2017年にTHAAD(サード/高高度防衛ミサイル)の正式配備を決めると、中国国内で激しい韓国製品の不買運動が起こり、ヒョンデや起亜といった韓国車もターゲットとなった。そしていまもなおその影響を引きずっていると言われている。

ヒョンデIONIQ 5の走行写真

 中国では、国内で自動車製造を行う際に、地元中国メーカーと外資企業で合弁会社を設立し、外資企業の出資比率を50%に制限し、合弁会社数も原則2社までとしてきたが、2022年に乗用車の外資規制を撤廃している。そのため、いまではテスラが単独で中国において生産を行ったり、BMWが現地合弁会社への出資比率の引き上げなどを行っているが、合弁会社という形をとる限りは、中国での利益は合弁パートナーと山分けしなければならないので、そもそも合弁会社で中国現地生産した新車がよく売れても、収益効率はそもそもよくなかった。

 日本でも、規模は中国ほどではないものの、ドイツブランド車がよく売れているが、「日本のほうが収益率は中国より上(販売するモデルも本国ではオプション扱いとなる装備が多くついているなど、日本のほうが収益率の高いモデルが多いともいわれている)」といった都市伝説まであるほど。

中国のモーターショーのメルセデス・ベンツブース

 少し話はそれたが、今回の三菱自動車の中国市場撤退の背景について、日本車全体のBEVへの出遅れがあるとも報じるメディアが多い。しかし、2022暦年締め年間販売台数で約2700万台を販売する世界一の市場である中国でも、そしてNEVの販売に積極的な中国政府を持ってしても、中国のNEVの販売比率は全体の3割程度に落ち着いている。

 中国の報道を見ていると、政府もNEVにまっしぐらというわけでもない様子が見られる。沿岸部はNEVのためのインフラの充実が進むが、内陸部はまだまだ十分ではなく、いまだにICE(内燃機関)車販売がメインとなっているとも聞く。政府もエネルギーバランスを意識している部分もあるようで、ICEのみとなる新型車も続々デビューしている。

 また、当初2035年以降はNEV以外の販売を終了するとしていたが、いまではICEについてはHEVならば販売継続OKとなっている。大消費地となる沿岸部ではBEVの存在も目立つが、日本車が圧倒的に不利と言うわけでもなく、逆に日本車の得意なHEVが注目されているのだから、BEVに出遅れているのが決定的に不利な状況を招いているとも言えない。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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