スーパーカーだけに許された「ガバッとボディ」! デメリットだらけのチルトカウルは「カッコイイから」ですべて許される (2/2ページ)

普通のクルマには採用しづらいからこそ余計に憧れる

 また、レーシングカーなどの場合、クラッシュで即交換が求められるケースにおいても一体化されたセクションを丸ごと交換するほうが早いことは言うまでもありません。このあたりはグループBのラリーカー、たとえばアウディ・シュポルト・クワトロやランチア・ラリーなどがチルトカウルを採用していることでもおわかりになるかと。

アウディ・シュポルト・クワトロ グループBのレース写真

 また、グループC以前のスポーツカーレースなどでは、カウルどころかボディすべてが一体化されているケースも少なくありませんでした。着せ替えボディ、といったニュアンスにほど近いものです。

 さらに、レーシングカーや繊細なメカニズムをもったスポーツカーは、頻繁なメンテナンスやセッティングが不可欠。すると、大きくガバ開きする方がやりやすいことも大きなメリット。フードを開けたくらいでは、手が届かないところや目視しづらいところもありますが、チルト方式ならばたいていのチェックは難しくありません。

フェラーリ512BBのチルトカウル

 一方で、チルトカウルにはメリットとバーターするかのようなデメリットも少なくありません。軽量化のための素材はプレス鋼板より高価となることはもちろんですが、モノが大きくなるだけに生産効率も決して高いとは言い難いはず。高価なスポーツカーでなければ、メーカーの経理担当者が首を縦に振ることはないのです。

 また、効率よく軽量化するためには相応の巧みな設計が求められることも確かでしょう。ライトやエアダクト、あるいは配線のケーブルといったものもバカにならず、RCカーのクリアボディのようなわけにはいきません。

フェラーリF40のサイドスタイリング

 さらに、市販車であれば衝突安全もまた重要なファクター。チルトカウルの耐衝撃性能に関するデータを見るまでもなく、ぶつけたらクシャクシャになりそうなことは想像に難くありません。クルマ好きはともかく、普通の人々はカッコいい、よりも安全性能に重きを置くのですから、一般的なクルマは採用しづらいのかと。

 もっとも、カッコよさというのはある種の理屈を超越していることも確かで、きっとAIに「安全でなくとも、値段が高くても、カッコいいクルマを選んでよ」とオーダーすれば、必ずや上述のようなクルマが選ばれること間違いないでしょう。メリットとデメリットを計るだけが正義ではないこと、とっくの昔にAIは理解しているのですから。


石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

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三菱パジェロミニ/ビューエルXB12R/KTM 690SMC
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