ほぼ同時に新型になったホンダN-BOX vs スズキ・スペーシア! 全方位で真っ向勝負させてみた (1/2ページ)

この記事をまとめると

■2023年は売れ筋軽自動車であるホンダN-BOXとスズキ・スペーシアの新型が登場した

■スーパーハイト系で人気の高い両車をデザインや使い勝手、走行性能などを比較

■使い勝手の面ではスペーシア、走りの面ではN-BOXが有利という見立て

スーパーハイトの売れ筋モデル2台を比較してみた

 いま、国内でもっとも売れているクルマのジャンルのひとつが、軽自動車のハイトワゴン、スーパーハイト系とも呼ばれるクルマたちだ。とくにホンダN-BOXは、先代(2代目)のモデル末期にもかかわらず、2023年度上半期新車販売台数で登録車を含む第1位を獲得。軽自動車最大級の室内空間や質感の高いデザイン、上級車さながらの走行性能、そして魅力的な特別仕様車の追加など、まさに軽自動車の下克上を実現した1台だ。

 そんなN-BOXは、2023年10月6日に3代目となる新型を発売。プラットフォーム、NAとターボを揃えるエンジン、CVT、パッケージまでもが2代目からキャリーオーバーされ、いわば”完成形”の2代目の熟成版とも言えるのだが、新型N-BOXは当初から販売絶好調。新車効果もあり、ますます勢いが止まらない様相なのである。

 そのN-BOXの発売から約1カ月半後の2023年11月22日に登場したのが、N-BOXと同じ軽ハイトワゴン、スーパーハイト系のスズキ・スペーシア。2022年5月には宿敵、N-BOXを抜き、軽自動車販売台数No.1を獲得したN-BOXの好ライバルである。ホンダとスズキの販売店数の大きな違いからすれば、それは快挙と言っていいだろう。なお、新型N-BOX同様に、基本部分、パッケージは先代からのキャリーオーバーとなる。

 さて、ここでは新型が出そろった新型N-BOXと新型スペーシアを項目別に比較してみたい。

◆デザイン

 N-BOX、スペーシアともに標準車とカスタムがラインアップされるが、新型となってデザイン上の変化が大きく感じるのは、N-BOXは標準車。対するスペーシアはカスタムのほうだ。N-BOXの標準車はひと目で新型とわかる、フロントグリルに小さな穴を無数に開けた顔つきが新鮮。逆に、カスタムは先代と見た目の変化は最小限、という印象である。

 スペーシアはカスタムの顔つきが、先代のギラギラしたオラオラ顔から、カスタムらしさはそのままに、より上質で高級感ある、いいかえれば控え目なフロントデザインになっている。

 インテリアは、N-BOXの場合、乗り込んだ瞬間に新しさを感じさせてくれるデザインだ。その理由はまず、ホンダ軽自動車初の7インチ液晶メーターを備えたこと。そしてセンターディスプレイはタブレットのような8インチHonda CONNECT対応のナビ、オーディオが用意され、とくに前席での新鮮度が目覚ましい。

 スペーシアは、全車インパネまわりの使い勝手をさらに進化させたデザイン、そしてカスタムの高級感溢れるブラック基調×ボルドーの色使い、ピアノブラックの加飾によるホテルのラウンジをイメージした見た目の質感の高さが見どころ。先代で足りなかったところを見事に進化させている。

◆使い勝手

 軽ハイトワゴン、スーパーハイト系は、両側スライドドアを備え、天井の高さや前後席間距離のゆとりを含めた室内空間の驚くべき広さはもちろん、後席の乗降性やシートアレンジ、後席格納によるラゲッジルームの拡大など、子育て世代からアウトドア派までの幅広いユーザーに対応するミニマムかつ下克上的なクルマだ。

 スライドドアの乗降性にかかわる数値から説明すれば、N-BOXはステップ地上高365mm(フロアとの段差なし)、開口部幅600mm、開口部高1240mm。スペーシアはステップ地上高345mm(フロアとの段差なし)、開口部幅600mm、開口部高1250mm。つまり、フロアはスペーシアのほうがやや低く、しかし開口部そのものはほぼいっしょ(ともに先代に準じる)。N-BOXのステップ地上高がスペーシアより20mm高いといっても、老若男女が乗り降りしやすい高さであることは間違いない。

 ちなみに後席のシートサイズ、フロアからシート先端までの高さ=ヒール段差も両車、ほぼいっしょであり、優劣は付けられない。

 が、使い勝手に特筆すべき飛び道具を持たないN-BOXに対して、スペーシアは軽自動車作りに長けたメーカーの意地を見せる。そのひとつ目が、スズキ初採用となる後席の「マルチユースフラップ」だ。フラップの角度、長さを調整することで「荷物ストッパーモード」、「レッグサポートモード」、「オットマンモード」3つのモードに対応する。

「荷物ストッパーモード」は、後席に荷物を置く際、荷物がフロアに落ちにくくなるほか、「レッグサポートモード」は、走行中の姿勢安定をサポートしてくれるとともに、後席の座面(実測480mm)が短いと感じる長身の人でも、シート座面が伸びたような着座姿勢となり、快適度を大幅にアップさせる効果がある。

「オットマンモード」は主に停車時に、後席のリクライニングを倒した状態でフラップを前方や上方向に出して脚を乗せれば、まさに旅客機の上級クラスなどにあるオットマン同様、お尻にかかる負担をふくらはぎなどに分散させる効果があり、寛ぎ感が高まるモード。

 その上で、スペーシアには後席用のUSBソケットや天井サーキュレーター(N-BOXには不採用)まで用意されているのだから、装備的には高級車さながらだ。天井サーキュレーターについて補足すると、軽自動車で設定があるのはスペーシアと日産ルークスだけ。軽自動車には後席エアコン吹き出し口が備わらず、暑い時期、寒い時期の後席の空調環境に不満が生じやすいのだが、それを解決してくれる決め手になる、大空間だからこそ欲しい快適装備といっていい。

 室内空間広さについて改めて比較すると、身長172cmの筆者のドライビングポジション基準で、N-BOXは前席頭上に290mm、後席頭上に235mm、後席膝まわりに最大420mmものスペースがある。スペーシアは前席頭上に335mm、後席頭上に270mm、後席膝まわりに最大325mmのスペースだ。頭上方向でスペーシア、後席足もとの広さでN-BOXということになるのだが、どちらも広すぎるほど広い空間であることは間違いない。ここで優劣をつけるのはナンセンスである。

 荷物の積載性はどうだろう。N-BOXのラゲッジスペースは重い荷物の出し入れ性やペットの乗降にかかわる開口部地上高490mm、フロア幅900mm、奥行き410~570mm(後席スライド位置による)、最低天井高1170mm、後席格納時のフロア長1280mmだ。一方、スペーシアは開口部地上高535mm(自転車)の前輪ガイド部510mm、フロア幅890mm、奥行き310~520mm(後席スライド位置による)、最低天井高1125mm、後席格納時のフロア長1270mmとなる。

 開口部地上高ではN-BOXのほうが低いのが特徴的だが、そもそも世界のステーションワゴンの平均値が630mmだから、両車ともに低すぎるほど低いと見ていい。軽自動車のラゲッジスペースとしては、使い勝手抜群の2台と言える。後席を格納したときの使いやすさでは、「とにかく自転車を積みやすいラゲッジスペースにこだわった」というスペーシアのフラット度(フラットだと室内高を高めやすくなる)が上まわる。

 さらにスペーシアは、コロナ禍に開発が行われたこともあり、テイクアウト需要に対応。N-BOXにもある後席のパーソナルテーブルはもちろん、助手席前にもテイクアウトした食べ物が置けるビッグオープントレーを、ボトルホルダーとともに用意(四角い大きい弁当も置けるらしい)。当然、アウトドアなどでも大活躍してくれる便利さとなる。

 よって、室内空間の広さは両車ともに十二分として、細かい使い勝手ではスペーシアが一歩リードしている印象となる。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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