【試乗】装備も走りも燃費も満足で「これが売れなきゃ何が売れる?」 スズキ新型スペーシアは魅力が渋滞してた (1/2ページ)

この記事をまとめると

スズキ・スペーシアとスペーシアカスタムがフルモデルチェンジを敢行

■収納などを全面的に見直し、後席には新開発のマルチユースフラップを導入した

■全モデルにマイルドハイブリッドを搭載するのが特徴

スーパーハイトワゴンの売れっ子が生まれ変わった!

 2023年には数多くの新型車が登場したが、カテゴリー別に見ると軽自動車が注目される。2023年10月には、国内でもっとも多く販売されるホンダN-BOXがフルモデルチェンジされ、11月には国内販売ランキングの上位に入るスズキ・スペーシアも新型になった。

 スペーシアとN-BOXは、両車ともに全高が1700mmを上まわり、後席側のドアをスライド式にしたスーパーハイトワゴンだ。格好のライバル同士になる。しかもいまは国内で販売される新車の40%近くが軽自動車で、軽乗用車については、その半数以上をスーパーハイトワゴンが占める。N-BOXに続くスペーシアのフルモデルチェンジは、クルマ選びに大きな影響を与えるわけだ。

 そこで新型スペーシアに試乗した。グレード構成は標準ボディとカスタムに大別される。カスタムはフロントマスクのデザインが精悍な印象で、前後のバンパーはエアロ形状になる。サイドアンダースポイラーやルーフエンドスポイラー、アルミホイールなども標準装着され、外観はスポーティな雰囲気だ。

 エンジンは全車がマイルドハイブリッドを搭載して、カスタムにはターボエンジン車も用意される。今回試乗したのは、標準ボディのハイブリッドXと、カスタムハイブリッドXSターボであった。開発者は「先代型では標準ボディの販売比率が少し高かった」と言う。

 そこで標準ボディのハイブリッドXから試乗を開始した。外観はスーパーハイトワゴンの典型だ。全高は1785mmと高く、ボディは水平基調に仕上げた。運転席に座るとボンネットが良く見えて、ボディの先端や車幅もわかりやすい。ボディは荷物を収めるコンテナをモチーフにデザインされ、側面には前後方向にラインが入る。

 側方や後方の視界も良く、サイドウインドウから顔を出して後方を振り返ると、右側の後輪が見えた。これはサイドウインドウの下端が低く視界に優れた証で、駐車スペースの白線に合わせる操作もしやすい。

 14インチタイヤを装着した標準ボディは、最小回転半径も4.4mに収まり、小まわりの利きが良い。15インチタイヤのカスタムXSと同ターボも4.6mとしている。視界の良さと相まって、混雑した街なかや駐車場でも運転しやすい。

 車内に入ると、インパネの形状が先代型とは異なる。先代型はシンプルな印象で、助手席の前側には、フタの付いた上下に開く収納設備を配置した。それが、新型は立体的なデザインに変わり、左側のエアコン吹き出し口の周辺に、視覚的なボリューム感を持たせた。

 先代型でフタの付いた収納設備が装着された部分は、新型では大型のトレイになる。この変更はコスト低減とも受け取られるが、開発者は以下のように説明した。

「最近はコロナ禍の影響もあり、車内で食事をするお客さまが増えた。そこで助手席の前側には、コンビニ弁当などを置けるトレイを装着した」。USBソケットなども含めて、インパネ周辺は、生活空間としての機能が充実している。

 前席の座り心地は、柔軟性の伴うファブリックのシート生地と相まってリラックスできる。着座姿勢をもう少し安定させると良いが、優しい座り心地で乗り降りもしやすい。

 後席は頭上と足もとの空間が広い。身長170cmの大人4名が乗車したとき、後席のスライド位置を後端に寄せると、後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシ3つ半に達する。頭上にも握りコブシ3つ分の余裕があり、広々としている。

 ただし、この状態では、後席に座る乗員の頭部がリヤウインドウに接近する。追突されたときの不安も感じるため、実際に乗車するときは、後席に座る乗員の膝先空間が握りコブシ2つ分になるようスライド位置を前側に寄せたい。この状態でも足もとは十分に広く、リヤウインドウとの間隔も開く。後席の後ろ側の荷室も拡大して、荷物も積みやすい。

 後席で注目されるのは、新開発されたマルチユースフラップだ。ミニバンに装着されるオットマンに似た装備で、後席の座面の前端部分を調節できる。フラップの角度を少し付けると、ふくらはぎが支えられ、引き出すとリラックスした姿勢も取れる。フラップを反転させると、座面の前端部分が上側に張り出して、後席の上に置いた荷物が床に落ちにくい。

 助手席の座面の下にも大容量の収納ボックスが備わり、取っ手を装着したから車外に持ち出せる。収納設備は豊富に用意した。

 ただし、このマルチユースフラップは、快適性を高める装備である一方、座面の前端が硬くなる。ユーザーによっては違和感が生じるため、非装着のレスオプションがあると親切だ。ハイブリッドGとカスタムハイブリッドGSにはもともと装着されないが、この2グレードでは、後席にエアコンの冷気を送るスリムサーキュレーター、前席の背面に装着される後席用テーブルなども省かれる。購入時には後席の快適性と使い勝手を確認して、ニーズに合った仕様を選びたい。

 後席の背もたれを前側に倒すと、座面も連動して下がり、大容量の荷室に変更できる。路面から荷室床面までの高さは510mmと低く、自転車を積むときも前輪を大きく持ち上げる必要はない。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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