「ほかのクルマじゃ替えがきかない……」オーナーが嘆くほどの唯一無二っぷり! もう二度と現れない贅沢すぎる軽自動車「ホンダ・ビート」 (2/2ページ)

技術が詰め込まれた本気のスペック

 全長×全幅×全高=3295×1395×1175mm、ホイールベース2280mm、車両重量760kgという、旧軽自動車規格に準ずる軽量コンパクトなボディに、直列3気筒SOHC12バルブエンジンと5速MTをミッドに横置き。前後ストラット式サスペンション、高く閉断面のセンタートンネルとサイドシルにより十分な曲げ・ねじり剛性を備えた専用のフルオープン・モノコックボディ、センタートンネルと運転席を左側へ25mmオフセットした左右非対称のインテリア、わずかながらも手荷物を搭載できるリヤオーバーハングのラゲッジルームを組み合わせている。

 そして、E07A型直列3気筒SOHC12バルブエンジンには、3連スロットルとふたつの燃料噴射制御マップを組み合わせた「MTREC」(エムトレック。Multi Throttle Responsive Engine Control System)を採用。SOHCながら最高出力は自主規制値一杯の64馬力/8100rpm、最大トルクは6.1kg-m/7000rpmという、ホンダらしい超高回転高馬力型ユニットに仕立て上げた。

 それでいて10モード燃費は17.2km/Lと、当時としては低燃費なのも見逃せない。

 そうすることで、楽しさも運動性能もオープンカーとしての爽快感も、さらには居住性や実用性、安全・環境性能も、何もかも妥協せず、旧軽自動車規格のサイズに詰め込んだ、果たしてビートは極めて欲張りなミッドシップ軽オープンスポーツカーだった。

 筆者が運転免許取得後、最初に所有したのは1989年式ユーノス・ロードスターだったが、ビートは1996年の生産・販売終了から約10年後に試乗したところ、そんな筆者の目からしても、初代ロードスター以上に軽快で開放感に溢れ一体感のある走りが楽しめる、最高のオープンカーだった。

 その後、2015年4月にはS660が発売されたが、こちらはビートと同じくミッドシップ軽オープンながら、ターボエンジンにタルガトップボディを組み合わせた、パフォーマンス志向の強い性格に。2022年3月に生産終了するが、一方でビートは2011年、誕生20周年のタイミングでホンダアクセスより「20周年記念専用純正アクセサリー」が発売され、2017年には純正補修部品の再生産・販売が開始されるなど、その後も多くのオーナーに愛され続けている。

 軽自動車規格が四半世紀前に変わり、クルマに関する法規も比較にならないほど厳しくなったいま、ビートオーナーが乗り換えるに値すると認められるクルマは、もう二度と現れないのかもしれない。


遠藤正賢 ENDO MASAKATSU

自動車・業界ジャーナリスト/編集

愛車
ホンダS2000(2003年式)
趣味
ゲーム
好きな有名人
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