「286万円のダイヤ入りキー」でわかるバブルの申し子! 打倒セルシオを狙うも1代で消滅した「インフィニティQ45」という悲運の高級車 (2/2ページ)

グリルレスデザインが日本ではウケなかった

 もちろん、高級車としての走行性能も一流で、キャビンまわりのピラーなどに高密度硬質発砲ウレタンの注入、主要スポット溶接部のスポットピッチ短縮化などを行ったほか、エンジンのアッセンブリーバランス取り、パワートレインの徹底した防振対策によって安全性・静粛性・品質へのこだわりを見せ、さらに出荷前に高速走行チェックを含む約40分の走行検査を全車に実施していたほどであった。

※写真は北米仕様のインフィニティQ45

 が、そうした日産の高級車への挑戦、Q45に対する熱意とは裏腹に、グリルレスのフロントフェイスはかなり独特で、少なくとも日本では賛否両論。デザイン的にも高級車然としていて、車内の静かさなどにも大きな特徴があったセルシオとほぼ同時発売というタイミングの悪さもあって、バブル期とはいえ高級車を買い求める保守的ユーザー層のウケはいまひとつ。

 バブル崩壊とともに、日本市場においては1代限り、1997年に生産を終了することになる。これが1989年に勃発したレクサスVSインフィニティの結末ということだ。

※写真は北米仕様のインフィニティQ45

 というわけで、ハイソカーブームの火付け役ともなったバブル期の1988年1月に発売され、大ヒットした日産シーマやセルシオの影に隠れてしまった悲運の高級車がインフィニティQ45だったわけだ。とはいえ、北米市場では3・4代目シーマをベースにしたQ45が生き延びている。

 もし、1989年にシーマのようにグリルレスデザインではない高級車然とした、保守派ユーザーにもなじめるフロントフェイスでQ45が日本国内で登場していたら、状況は変わっていたかも知れない。

 もっとも、ハイソカー、デートカーとしてバブル期のタクシーやBMW3シリーズ(六本木のカローラ)などで大混雑した東京・六本木の道でブイブイ走り、停めるには、シーマのボディサイズ(全長4890×全幅1770×全高1380mm)で、フロントグリルがあって高級車らしく見えるほうが適切だったともいえたりして……。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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