自律型による完全無人運転はまだ先の話になりそう
自動運転レベル4以上の、いわゆる無人運転については上記のレベルわけとは別の観点で分類する必要もある。ここでは、大きく3つのタイプを紹介しよう。
最初に紹介するのは「遠隔監視型」だ。
これは、現時点で進んでいる無人運転バス・タクシーが採用・想定しているタイプ。車両自体にも自動運転機能が搭載されているが、システム想定外の状況に遭遇した際には、遠隔監視しているオペレーター(人間)が操作、介入を行うというものだ。
遠隔型自動運転の実証実験画像はこちら
オペレーションセンターにおいて、ひとりの人間が複数台の車両を監視できるため、ドライバー不足に対するソリューションとしては有効だが、オペレーターが不在のときは車両を走らせることができない。
遠隔監視しているということは、運転主体はオペレーターといえる。そのため、営業時間の決まっている公共交通であれば対応できるが、個人所有者やカーシェアリングへの対応は難しいタイプとなる。
また、遠隔監視・遠隔操作するためには常に良好な通信状態が維持されている必要もある。そのため、通信インフラの安定性が非常に重要で、そうした条件が満たされていることも遠隔監視型の無人運転には必須となる。
遠隔型自動運転のオペレーター画像はこちら
遠隔監視と似たタイプに協調型がある。
これは、他の車両との連携や道路インフラからの情報をもとに走行するタイプ。人間が運転する車両を先頭に隊列走行を行うトラックの追従している車両は、協調タイプの無人運転の典型といえる。そのほか、敷地内を走行するバスなども道路との協調型が少なくない。
協調型自動運転のイメージ画像はこちら
遠隔監視型と協調型、これらふたつのタイプは、いずれも最終的には人間の判断によって走行しているため、完全自動運転とはいいがたい。おそらく、多くの人が想像している完全自動運転というのは、好きな時間に、好きな場所を移動できるクルマだろう。
そうした無人運転を可能にするのが「スタンドアロン型(自律型)」だ。
車両に搭載されたセンサーが周辺状況を把握、GPSなどによる位置情報を利用しながら、車載のAIがすべての運転操作を行うのが、スタンドアロン型となる。状況把握・判断・操作のすべてを自律的に行うことができる技術が確立しなくては、実現できないタイプだ。
ここでSAE自動運転レベルの分類に戻ると、最高峰のレベル5では『いかなる条件でも』自動運転を継続できることが求められる。この条件を無人運転において満たすには、地図データのない場所でも自律走行ができなくてはならないし、通信インフラの整備されていない地域でも運転を継続できなくてはならない。
ステアリングなどが存在しない完全自動運転コンセプトカー画像はこちら
現在、進められているスタンドアロン型の無人運転開発においても、高精度な地図データは必須というのが主流であり、厳密にいえば自動運転レベル4の無人運転にとどまっている。
果たして、自動運転レベル5の条件を満たす「自律型の無人運転」が実現するのは、いつになるだろうか。