新車購入の楽しみ「オプション選び」が消えつつある令和! メーカーがグレードの簡素化と装備の標準化を進めるワケ (2/2ページ)

時代と共にオプションへの価値観も変化している

 かつて、「トラッド・サニー」と呼ばれた6代目日産サニーが、上級グレードでパワーウインドウと電動格納式ドアミラーを標準装備したときは話題になった。その当時5代目であったカローラは、カタログモデルでは上級グレードでもパワーウインドウはオプションであった。そして1987年に6代目が登場した際に、カローラ史上で初めてパワーウインドウと電磁式ドアロックが上級グレードに標準装備となった。それだけトヨタは、機能の標準装備化には慎重だったともいえよう。

 一方で、初代セリカでは「フルチョイスシステム」という仕組みを導入している。これは装備どころか、エンジンやトランスミッション、内装などをまさにオーダーメイド感覚で自分好みの仕様を選んで注文することができた。

 従来トヨタ車では、中間グレードでは標準装備の機能がさほど多くないかわりに、メーカーオプションを豊富に用意していた。これは最上級ほどの装備は必要ないが、中間グレードでは装備がやや寂しいというひとに対して気に入った装備だけを選ぶことができるようにとの配慮だと筆者は理解していた。

 また、他メーカーでは「セットオプション」として、ひとつオプションを選ぶと芋づる式に複数のオプションが一体選択となることが多かったが、トヨタは単体でメーカーオプションを用意することが多かった。やがてトヨタでもセットオプションが目立ってきたのだが、今度は改良を機にメーカーオプションだった装備の標準装備化がここのところ目立ってきたのである。

 ここ最近は、豊富なオプションから自分が選ぶべきものを決めていくのが面倒くさいという話もよく聞く。昭和のころはマイカーを購入すること自体珍しい時代だったし、1車種でのグレード数も相当多かった。筆者の父親も、カタログを見ながら、巻末の装備一覧表内のほしい装備のところに赤いマーカーを引いて楽しそうに車種選びをしていたものだ。

 しかし、時代は変わった。すでにトヨタでは紙のカタログはなくなり、トヨタ以外のメーカーも紙のカタログの存在は風前の灯となっているので、自宅でマーカーを引くということもできなくなってきている。そして、装備差による上下関係(縦)に基づくグレード構成という概念も昭和に比べれば希薄となり、性格わけした横一線でのグレード構成も目立っている。

 可能な限りシンプルにチョイスする環境でクルマ選びをするのが令和の新車の買い方ともいえるなか、今回のトヨタの改良の流れは単にコスト調整というものではなく、時代の流れに沿った動きともいえるかもしれない。


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小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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