【試乗】333馬力を手に入れた「VWゴルフR」の戦闘力をチェック! 4WDマイスターがクローズドで徹底的に走らせた (1/2ページ)

この記事をまとめると

■最新モデルのゴルフRは歴代最強スペックを誇る

■4WD機構の見直しやエンジンパフォーマンスの底上げが行われた

■パフォーマンスは高い領域にあるもののまだまだ改善できる余地のあるモデルであった

ゴルフR史上最強スペックを駆る

 VWゴルフのスポーツモデルであるゴルフRは、ゴルフGTIとともにホットハッチの代表格として並び評される。その最新モデルとして進化した2025年仕様を、千葉県木更津のポルシェ・エクスペリエンス・センター東京(PEC)において、限界領域や動的性能を試す機会を得た。

 ゴルフRは従来モデルからハンドリング性能には定評があり、これまでも“Cセグメントでベストハンドリング”と評してきた。あくまで自然なステアリングフィールと動力性能とのバランスが絶妙で、ドライバーとの一体感が高く意のままに操れた。

 今回のモデルでも、リヤアクスルに後輪左右駆動トルクを個別に制御する「トルクスプリッター」を採用している。これは高性能車として定評あるメルセデスAMG A 45 Sや、往年の名機、ランサーエボリューションのAYC(アクティブ・ヨー・コントロール)と似た車両制御思想を感じさせ、興味を惹かれていた。

 このトルクスプリット機構はリヤデファレンシャルの左右個別に摩擦クラッチを設け、その締結力を電子制御することで駆動力をコントロールするというもの。旋回中に積極的にヨーレートを引き出し、ノーズを内側へ押し込む特性に特化した印象だ。

 なので、ドリフトモードを備えるAMG A 45 Sや三菱のAYCとはかなり異なり、リヤを滑らせること自体が目的化している節がある。これはスポーツドライビングとしての喜びのひとつではあるが、以前のゴルフRが持っていた「駆動力と操縦性の高バランス」とは少し方向性が異なっていると感じる。

 実際、PECのハンドリングトラックで各ドライブモードを使いわけながら走らせたが、とくに中高速の連続コーナーにおいて、以前のモデルよりフロントの応答性がやや希薄に感じられた。これは今回、フロントデファレンシャルがオープンとなっていることと、電子制御ブレーキトルクベクタリングに頼っている点が影響していると思われる。旧モデルではLSD相当のXDSによる制御がより自然に働いていたため、旋回中のノーズの入りやすさが今以上に研ぎ澄まされていた。

 また、最新モデルではAWDシステムも進化している。これまでのゴルフRが採用していたハルデックス式の電子制御カップリングは廃止され、リヤアクスルに備わるクラッチ機構によって、前100:後0から前50:後50までの範囲で駆動力配分を行っている。

 従来は状況に応じて前後のトルク移動がカップリングにより固定的に制御されていたため、このモデルでは前後重量バランスに加えて、駆動力による旋回支援効果と駆動トラクションを両立できていた。

 今モデルはよりヨーモーメント発生重視の思想で、それがドリフト姿勢のキッカケ作りを容易にしているが、ドリフトをしながら加速してライントレースするというトータルバランスという点では、発展途上にある印象が否めなかった。とはいえ、これは否定ではなく「進化のステップ」と捉えるべきだろう。


この記事の画像ギャラリー

中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

新着情報