この記事をまとめると
■かつては都市部の混雑緩和策として路線バスに3扉車が導入されていた
■製造コストやノンステップ化の制約などから2扉車に移行
■関東バスでは動態保存車として現役の3扉車が存在しイベントなどで展示されている
さまざまな要因が絡み姿を消した
現代の路線バスといえば、運転席横の前扉と車体中央に配置された中扉と呼ばれるふたつの扉をもつ2ドア車が主流だが、過去には後扉と呼ばれる車体の後端にもうひとつの扉を設けた3ドア車も存在した。
都市部の路線バスは乗客が多く、乗降に時間がかかることによる遅延も起こることがしばしばあった。これを解決するために登場したのが3扉車だ。扉を増やすことで降車客を一度に多くさばけるため、乗降時間が短縮できるといったメリットがある。
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たとえば、鉄道でも東海道線や横須賀線といった近郊型の車両は、ひと昔前までは1両あたりの扉が3つで、座席もボックスシートメインのセミクロスシート車両が主流であったが、乗降時間の短縮と増加する乗客に対応させるため、最近では1両当たり4ドアのロングシート車両が主力となっている。
ほかにも、少し前までは首都圏の通勤電車にも乗降時間短縮のために、1両に6つの扉を設けた車両を組み込んだJR山手線や、東急田園都市線などが混雑緩和と乗降時間短縮に活躍していた。この6ドア電車については首都圏のホームドア設置駅の増加に伴い消滅していったが、路線バスの3ドア車はなぜ衰退してしまったのだろうか?
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その理由はいくつか存在する。まずは3扉車の製造コストの問題。2ドア車に比べ、物理的に扉がひとつ多い3扉車は、車体の加工や装着部品の多さなどからコストが上昇する。
さらに、2000年に施行された「交通バリアフリー法」に適合させるべく広まったノンステップバスを3扉車化する場合、車体の構造上、リヤサスペンションまわりや、後部に配置されるエンジンスペースの問題などでより多くの制約があるなかで設計しなくてはならないといった問題もあった(ノンステップバスの3扉車自体は存在した)。また、3扉車に変わるモデルとして、中扉を従来の倍のサイズにしたワイドドア車の普及などにより、3扉車は姿を消していった。
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国内では、関東バスや西武バスといった乗降客の多い事業者が数多く導入していた3扉車だが、意外にも東急バスや京急バスなど、さまざまな事業者が試験的な意味合いもこめて少数ながら導入したケースは存在したようだ。
それでも、圧倒的多数の3扉車を所有していた関東バスは、一時は保有車両の8割以上が3扉車であった時期もあるほどパイオニア的な存在だ。ほぼ消滅してしまった3扉車だが、関東バスでは現役で活躍していたB3008号車を動態保存車しており、イベントなどでマニア向けに運行や展示などを行い人気を集めている。
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また、ごくまれに通常運行にサプライズ的に組み込まれることもあり、関東バスのWEBサイトなどで告知があるので、気になる方はぜひ貴重な3扉車に乗車してみてはいかがだろうか。