なんと1リッター1500円超え! レース用ガソリンって普通のガソリンと何が違う?

この記事をまとめると

■レース用ガソリンは高オクタン価・高酸素含有量で高出力を実現

■公道使用は不可かつ非常に高価だが、競技車両に最適な特性をもっている

■F1やスーパーGTでは環境配慮型カーボンニュートラル燃料も導入中だ

専用にチューニングされたエンジンで真価を発揮する

 市販のガソリンは基本的にレギュラーとハイオクの2種類だが、レースなどでは競技用にレース用ガソリンと呼ばれる特別な燃料を使うことがある。

 では、それはいったいどんなガソリンなのか?

 わかりやすく説明すると、ハイオクよりもオクタン価が高く、酸素含有量が多いガソリンだと思えばいい。

 市販のガソリンは、JISの規格でオクタン価が決まっていて、レギュラーガソリンが89以上、ハイオクガソリンが96以上と定められている。それに従い、市販のハイオクガソリンのオクタン価は98〜100で作られているが、レース用ガソリンは101〜113ぐらいとかなり高い。

 オクタン価が高いとなにがいいかというと、耐ノッキング性が高くなるので点火時期を進められ、NAエンジンならより高圧縮に、ターボエンジンならブースト圧をアップできて出力向上が見込める。また、酸素含有量が多くなると燃焼カロリーもアップするので、空燃比や点火時期、プラグの熱価などを最適化してやれば、ハイオクガソリン以上のハイパワーと高トルクが実現するのだ。

 ただし、どのレースでも使用できるわけではなく、レギュレーションで認められている燃料しか公認競技では使えない。また成分の問題で、公道でレース用ガソリンを使用することは許されていない。もっともそれ以前にレース用ガソリンは高価なので、公道での移動に使うメリットはないのだが……。(例:elfのPERFO 105は1710円/L、HKSのDRAG GASは1650円/L)

 ちなみにひと昔前だと、サーキット内のガソリンスタンドでレース用のガソリンとしてアブガス(アビエーションガソリン)を売っていた。アブガスは航空機用の有鉛ガソリンで、オクタン価を向上させるアンチノック剤としてテトラエチル鉛を使用していたが、現在は環境への影響と健康への悪影響から使用が禁止されている。

 また環境問題に関していえば、F1では2022年にレギュレーションの変更があった。燃料にエタノールを10%混合するようになり、2026年からは100%カーボンニュートラル燃料の使用が義務づけられている。国内でも、スーパーGTでカーボンニュートラル燃料の導入がはじまった。GT500クラスでは、2023年シーズンからカーボンニュートラル燃料を使用し、GT300クラスでも、2024年からカーボンニュートラル燃料と通常のガソリンを50%ずつ混ぜた混合燃料「R50」を使いはじめている。

 カーボンニュートラル燃料とは、光合成により二酸化炭素を吸収して育った植物を原料に作られた燃料のことだ。スーパーGTでは木材チップなどを原料にした独ハルターマン・カーレス社のカーボンニュートラル燃料を使用。この燃料は、植物ごみや木材チップなどのバイオマスを原料とし、化石由来の原料を一切使用していないのが特徴だ。

 ただこれも非常に高価で、定価だとおよそ1500円/L。二輪の全日本ロードレース選手権のJSB1000でも2023年からこの燃料を使っており、メーカーやタイヤメーカーなどが費用を分担することで400円/Lで提供しているといわれているが、やはり価格が大きなネックになっているのは確か。国内で合成燃料(e-fuel)を製造する場合、1リットルあたり300~700円になると試算されているが……。


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藤田竜太 FUJITA RYUTA

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