アウトビアンキ・アバルト……日本の若者も呪文のように口にしたもんよ! イマドキの若者にも知ってほしい「軽くて小さくて速くて安い」伊製ホットハッチの魅力 (1/2ページ)

この記事をまとめると

■アウトビアンキA112アバルトはかつて存在した軽量ホットハッチ

■名エンジニアの手で仕上げられたデザインと刺激的な性能で当時の若者を虜にした

■わずか70馬力ながら軽量でレスポンスに優れた走りはいまなお魅力的

コンパクトホットハッチを地で行く1台

 スモールクラスでもしびれるような魅力を放つメイクスといえば、アバルトを置いてほかにありません。なにしろ、カルロ・アバルトは当時のF1まで開発したエンジニアですから、街のチューナーとは別格。とはいえ、いまとなってはアバルトのレコルト・モンツァや695SSなどのクラシックモデルは価格高騰の一途。なかなか庶民が手を出せる金額ではありません。

 そこで、オススメしたいのがアウトビアンキA112アバルト! わずか670kgの車重に対し、フルチューンエンジンは70馬力と、聞いただけでも痛快さが読み取れるもの。国内導入された当時は、若者がこぞってサソリの毒に病みつきになったものでした。

 1969年デビューのアウトビアンキA112は、その名のとおりアウトビアンキ社製の2ボックス、FFのハッチバックカー。なお、アウトビアンキは自転車やオートバイを作っていた「ビアンキ」とフィアット、ピレリによる合弁会社で、基本的にはフィアットをベースとしたクルマを開発していました。自動車製造からは1996年に撤退していますが、ビアンキは自転車メーカーとしてはいまだにトップブランドの地位を守っています。

 そんなA112は、フィアット850から903ccのエンジンを流用し、またフィアット128の先行開発ということでプラットフォームも(サイズ変更して)流用という構成。ですが、スタイリングはベルトーネに任され、当時のチーフスタイリストだったマルチェロ・ガンディーニが腕をふるっています。スーパーカー的な片鱗は見られないものの、車体の四隅に配されたホイールハウスや、最終モデルまで変更されなかった6ライトウィンドウ、クラシックミニに勝るとも劣らないバランスのよいデザインは、さすがガンディーニと唸らずにはいられません。

 そして、当時のフィアットといえば、モータースポーツ関連はアバルト一色だったこというまでもありません。124アバルトラリーやX1/9アバルトの先行開発で大忙しだったはずのアバルトですが、早くも1970年にA112アバルトのプロトタイプを完成させています。

 もっとも、A112が搭載していたフィアット850のエンジンは、アバルトにとってはTCR1000のベースであったお馴染みのユニット。半球型燃焼室を持つラディアーレ・シリンダーヘッドや、排気系をマルミッテ・アバルトに変更するなどして、いきなり108馬力を叩き出してみせます。プロトなのでさほど信憑性は高くないものの、最高速は208km/hともいわれ、さすがアバルトの面目躍如となったのでした。

 ですが、その後1971年に発売されたA112アバルトはいくらかおとなしく、水冷OHV直列4気筒982ccユニットをベースに吸排気チューンによって58馬力という設定。その後、A112シリーズはフェイスリフトを繰り返し、最終的には第7世代まで進化を遂げることに。このうち、日本に導入されたのは1982年に生まれた第6世代のアバルトから。


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石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

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