壊れて当然のノリだけど現代のクルマにはない楽しさがある! 沼る可能性しかないハチマルイタフラ車 (1/2ページ)

この記事をまとめると

■1980年代に一世を風靡したイタフラ車はシンプルで楽しいモデルが多かった

■ハチマル系ラテン車はいまや絶滅に瀕している

■現在もギリギリ入手できそうな1980年代のイタフラ車を紹介する

理由もなく楽しそうでお洒落に見えた1980年代のイタフラ車

 コンピュータを多用した最近のポップミュージックが嫌いなわけでは決してない。だが、アレをずっと聴いていると心と身体が少し疲れてくるため、気がつけば1960~70年代のシンプルな楽器でシンプルに録音されたロックミュージックに選曲し直し、「やっぱこういうのが落ち着くよなぁ……」などと独りつぶやいている中年各位は、決して少なくないはず。

 それと同様にクルマ生活においても、近年のコンピュータ仕かけ的なクルマが嫌いなわけではないのだが、「でもやっぱり1980年代のラテン車(フランス・イタリア車)みたいな“シンプルで楽しいやつ”に、そろそろ戻ってみたいよなぁ……」と心のなかでつぶやいている中年各位も多そうだ。というか、筆者自身がそのケースに該当する。

 確かに1980年代に一世を風靡した(正確には世の中の一部を風靡した)当時のラテン車たちは、かなりゴキゲンだった。シンプルかつ軽量ゆえに、大したエンジンは積んでいなくても妙にスポーティで、そしてデザイン的にもハイカラで。

 まぁ「ハイカラ」という単語がそもそも若い世代的には死語なのかもしれないが、そんなことはどうでもいいのである。中年としてはとにかく80’sラテン車のことを思い出すだけで甘酸っぱい気持ちになれるし、できることならいま一度それらを所有し、最近のクルマでは絶対に味わうことができない「あの感じ」を堪能したいのだ。

 とはいえ多くのハチマル系ラテン車は、最近の中古車市場においては絶滅傾向にあるわけだが、そのなかでも比較的入手しやすいのは「フィアット・パンダ」だろうか。ご承知のとおり現在は3代目(の在庫車)が新車として販売されているフィアット・パンダだが、ここでいうパンダは1980年から2003年まで製造販売された初代モデルである。

 イタルデザインのジョルジェット・ジウジアーロ巨匠によりデザインされた初代フィアット・パンダは、製造コストを抑えるためにすべての窓を平滑な板ガラスとし、ボディにもひたすら直線と平面が続くデザインが採用された、安価な大衆実用車だった。

 しかし、“そこ”が逆に味となったというか何というかで、イタリア本国では先述したとおり「安価な実用大衆車。小さいけど、車内はけっこう広い」というニュアンスで受け入れられたわけだが、遠く離れた1980~90年代の日本では、「おしゃれな輸入コンパクト!」としてスマッシュヒット。いわゆるカタカナ職業の人々や、懐かしの「オリーブ少女」的な女性たちがこぞって買い求めた。

 日本市場には1982年に上陸した初代フィアット・パンダは、初期モデルであるセリエ1は空冷直2 OHVと水冷直4OHVというエンジンラインアップで、グリルの片側にスリットの入ったデザイン。1983年には横置きFF乗用車ベースとしては世界初の4WDモデルとなる「パンダ4×4」が登場し、1986年からのセリエ2では直4SOHCのFIREエンジンを搭載した。

 筆者は遺憾ながらセリエ2の運転経験しかないが、「CLX」の場合でも最高出力50馬力でしかない1.1リッターFIREエンジンは非力といえば非力なのだが、その走りは──車重が軽いゆえに──意外と活発。そして、キャンバストップ仕様の場合は走行中「車内と車外の境目」があいまいになり、まるで夏の日の夕方、古い和風家屋の縁側でたたずんでいるかのような感覚を味わうことができた。

 そんな初代フィアット・パンダの中古車は、現在でも20台以上が全国で流通しており、相場は80万~200万円といったところ。「4×4」とCVTの「セレクタ」はやや微妙かもしれないが、5速MTの「ホビー」や「CLX」は、2024年のいまだからこそ乗ってみたい“シンプル名車”である。

 初代パンダ以外のハチマル系ラテン車は、前述のとおり絶滅傾向にあるわけだが、それでもいちおう入手可能なのは「シトロエンBX」だろうか。とりあえず全国で5台ほどが、総額100万~190万円付近で流通している。

 1982年のパリサロンで発表され、日本には1984年に上陸したシトロエンBXは、大柄な「CX」と小ぶりな「GSA」の間を埋めるべく開発された5ドアハッチバックおよびステーションワゴン。デザインは今年3月に死去したマルチェロ・ガンディーニ巨匠が担当した。

 それまでは曲線を多用していたシトロエン車のデザインだったが、BXでは直線基調へと大胆に変更。足まわりは当然ながら金属スプリングの代わりに油圧とガス圧で車高を支えるハイドロニューマティックで、1986年までの前期型はなんともソフトな雲上感が味わえる乗り味だった。そして、前期型はボビン型スピードメーターを初めとする超絶個性的なインテリアも「超おしゃれ!」としかいいようのないものだった。

 現在、中古車市場で流通しているのは残念ながら(?)ほぼすべてが1987年以降の後期型だが、それでも(完調な個体であれば)ハイドロシトロエンならではの乗り味と、前期型ほどではないが超絶おしゃれな内外装デザインを堪能できるだろう。

 1980年代に新車として販売されていた頃は、「とにかく壊れまくるクルマ」として有名だったBXだが、とあるシトロエン専門店は「あれは当時の正規輸入元がハイドロシトロエンのマトモな整備知識を有してなかっただけ。ハイドロシトロエンもちゃんと正しく直せば、普通に普段づかいできるんですよ」という。

 もちろん「蛇の道は蛇」的な専門店で全面的な納車整備をビシッと行うのはマストだが、2024年にシトロエンBXを普段づかいするのは相当シブい。車両代と完全納車整備代を合わせて300万円ぐらい投じれば、けっこうイケるのかも……?


伊達軍曹 DATE GUNSO

自動車ライター

愛車
スバル・レヴォーグ STI Sport EX
趣味
絵画制作
好きな有名人
町田 康

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