この記事をまとめると
■スーパー耐久ST-Qクラスにスバルが投入するハイパフォXが初の24時間レースに挑戦
■予選好調も天候や濃霧の影響で決勝は波乱の展開となった
■車両とチーム双方の成長が感じられるST-Qクラス2位完走という結果に
本年度からニューマシンを投入するスバルの挑戦
国内で唯一の24時間レースである、「ENEOSスーパー耐久シリーズ2025 Empowered by BRIDGESTONE第3戦『NAPAC富士24時間レース』」が、5月31日から6月1日にかけて静岡県の富士スピードウェイで開催されました。
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スバルは昨年の24時間レースで、スバル・ハイパフォーマンスX フューチャーコンセプト(以下:ハイパフォX)を出走させる予定でしたが、車両の準備が間に合わず、SUBARU BRZ CNF Conceptで出走し、2022年から活動を開始したBRZのラストランを飾りました。
ハイパフォXは2024年の第3戦オートポリスから出走を開始したため、24時間レースは今年のレースが初となります。今回は監督の伊藤奨も含めての、伊藤和広・山内英輝・井口卓人・花沢雅史・伊藤 奨の5人のドライバーで24時間レースに挑みました。
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昨年のオートポリスから毎戦いろいろなところをアップデートさせており、ガソリンターボエンジンの可能性、プロペラシャフト付きAWDの運動性能向上、将来のBEVなどに対応するAWD制御の開発、そして次世代燃料に対応するといった具合に、多くの課題と向き合いながら参戦しています。今回は、フロントドアとルーフが再生カーボンを使ったカーボン製に交換されていました。
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これは、スバルの航空宇宙部門で使われる航空機向けのカーボンの端材を、あらたなカーボン素材に再生させて作られたものです。フロントドアはスバルとSTIが挑戦しているニュルブルクリンク24時間レースの車両と同じ製法で作られており、強度や剛性など非常にしっかりとした作りになっています。アクリル窓ガラスには、STIの刻印も見られました。
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ルーフに関しては、異なる工法で作られています。またリヤドアは前戦からカーボンドアに交換されていますが、こちらは純正のドアの骨格を残しながら簡易的かつコストを下げた作りになっています。
このようにして作られたルーフ、前後ドアの軽量化によって、昨年の最終戦よりも58kgほど軽量化されているとのこと。再生カーボンという素材をいろいろな製造メーカーで使うには、どのような素材で提供するのがよいのか、素材としての研究も兼ねているそうです。
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また、フロントまわりのボディ・サスペンションの補剛を行い、高G域でのアンダーステアに対応することや、高負荷に耐える剛性の確保を狙っています。さらにAWD制御の新たなロジックを採用し、スピンの抑制も狙っています。
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そして、これまでは海外製のカーボンニュートラル燃料を使用していましたが、今回からはエネオスが開発した、エタノールを20%混合した国産の低炭素ガソリン(E20)を使用することになりました。
ドライバーであり、エンジン系の取りまとめも行う花沢雅史氏は、「新燃料に対応させるためのセッティングや適合などを、サーキットに車両をもち込む前日の夜まで行っていました。大丈夫だろうと思っていましたが、実際の現場ではテスト環境と違うので、じつは心配はありました」とレース後に語ってくれました。
花沢雅史氏(右側)画像はこちら
そんないろいろなアップデートが行われたハイパフォXで挑んだ24時間レースは、木曜の練習走行から快調に周回を重ね、細かい修正点はあったようですが、おおむね想定どおりに進んでいきます。