【試乗】いまさら「自動運転レベル2」って……と思ったらビックリ! ホンダ・アコードの「Honda SENSING 360+」がめちゃめちゃ使える運転支援だった!! (2/2ページ)

「Honda SENSING 360+」は自動運転レベル2

 しかし、いくらシステムが高度な運転支援を実現したとしても、現状の法規では「レベル2」の運転支援システムに位置づけられる。つまり、ドライバーはつねに運転の主体であり続け、システムが適切に作動しているか監視し、必要に応じていつでも運転を交代できる状態である必要がある。

 このため、Honda SENSING 360+には、ドライバーモニタリング機能が搭載されている。これは、ダッシュボードセンターのナビ画面下に設置されたカメラがドライバーの顔を認識し、脇見や居眠りなどを検知するシステムだ。システムがドライバーの注意散漫を検知すると警告を発し、それでもドライバーからの反応がない場合はシステムの作動を停止させるなどの措置が講じられる。

 試乗中、意図的によそ見をしたり、目を閉じてみたりしたが、システムは即座に警告を発し、ドライバーに注意を促した。また、赤外線カメラゆえサングラスを着用していても目を閉じると警告が発され、システム精度の高さを実感した。このドライバーモニタリング機能は、ハンズオフ機能の安全性を担保する上で非常に重要な役割を担っており、万が一の事態に備える安全への配慮がうかがえる。

 ちなみにドライバーの意識消失をシステムが検知し判断すると警告が発され、ドライバーが反応しなければハザードを点灯させ同一車線内で徐々に減速し停止させる。自動的に緊急サポートセンターに通報が飛び、係員の通話に反応しなければ救急や警察への通報が行われる。もちろんこれは試乗で試すことではない。

 ここで、多くの人が気になるであろう「Honda SENSING Elite」との違いについて言及しておこう。Honda SENSING Eliteは、レジェンドに搭載されたシステムであり、日本で初めて国土交通省から「レベル3自動運転」の認可を受けたシステムである。

 最大の相違点は「自動運転レベル」にある。Honda SENSING 360+はあくまで「レベル2」の運転支援システムであり、設定車速は高速道路で135km/hまで引き上げられているが、ドライバーが運転の主体であることに変わりはない。一方、Honda SENSING Eliteは、特定の条件下(交通渋滞時など)において、システムが運転の主体となり、ドライバーは監視義務から解放される「レベル3」の自動運転を実現している。

 この違いは、法的な側面が大きく影響している。現状の日本の法規では、レベル3自動運転は極めて限定的な条件下でのみ許可されており、車両そのものに搭載されるセンサーの種類や数、精度など、非常に厳しい要件が課せられている。Honda SENSING Eliteは、これらの要件を満たすために、高精度3Dマップデータや高精度GNSS(全地球測位システム)などのより高度なセンサーと、複数系統のECU(電子制御ユニット)によるシステムを搭載している。

 対してHonda SENSING 360+は、既存のセンサー群の強化とソフトウェアの進化にGNSSを組み合わせ、レベル2の枠内で最大限の運転支援を実現しようとするアプローチといえる。アコードへの搭載は、より多くの一般車両に普及させることを念頭に置いた、実用性とコストパフォーマンスに優れたシステムである証といえるのだ。その費用は約40万円とのことだが、搭載する価値は間違いなくある。

 今回の試乗を通じて、Honda SENSING 360+はさまざまな課題を克服するベースシステムにもなりえると実感した。たとえば近年多発している高速道路の逆走問題や居眠りによる追突などにも適合できるのではないかと思えるのだ。

 自動車の完全自動運転技術は、地域や活用方法など限定的にしか機能しないレベルで、まだまだ発展途上の段階にある。しかし、Honda SENSING 360+の搭載で、より安全で快適なモビリティ社会に貢献できるに違いない。さらにいえば常々言及しているカーtoカーの通信機能として拡大し、他車とも連携して稼働させられればと願うところだ。


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中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
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海外巡り
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