デビュー後も毎年進化を続けた
日本車としては数少ないモデルイヤー制を採用し鍛え上げた
また、R35はモデルイヤー制を採用し、欧州スポーツカーのように絶え間なく進化を続けることを水野氏が宣言。その証明として、毎年ニュルブルクリンク北コースでタイムアタックを実施。デビュー直前に記録した7分38秒54は当時の911ターボ(997型)を凌駕するものであったことから、このタイムにポルシェサイドが反応。物議を醸したことでGT-Rの存在が世界に広く知れ渡ることになる。2009年モデルでは出力を485馬力へと微増し、ミッショントルク管理やローンチコントロールの制御ソフト面で刷新。シャシーとサスペンションのチューニングにも手が入れられた。
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2010年秋、初のマイナーチェンジモデルとして登場した2011年モデルは、開発責任者の水野氏がR35の新車発表時に「GT-Rの本当の姿は3年後に見せる」と語ったとおり、エンジンだけでなく、シャシーやトランスミッション、空力性能、インテリアに至るまでプレミアムスポーツカーとしてトータルでメスが入れられた。とくに心臓部は内部の精度向上、インレットの新設計、燃焼効率の見直しなどで性能が530馬力まで飛躍。日常域のコンフォート性や燃費性能を高めながら、ニュルのタイムを7分24秒台まで短縮するなど、マルチパフォーマンス性をさらに底上げした。
続く2012年モデルでは、エンジン出力はさらに高められ550馬力へ。足まわりには左右非対称セッティングという新たな試みが採用され、コーナーリング時の安定感や滑らかなステアリング特性などの向上を果たした。加速の安定性やトルク特性も改善されている。2013年モデルでは、ロールセンターを下げるとともにサスペンションや駆動系の見直しを図るなど、さらに熟成は進められた。
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2013年の大改革。1台ですべてを満たすクルマから、目指すべき方向性に合わせた開発に分離
2013年は、統括責任者が水野和敏氏からR34GT-Rの開発、GT-Rコンセプトの製作にも関与した田村宏志氏へと変わる。これにともない開発プロセスもチーム制から従来の部門制へと変わり、GT-Rの性格も、1台で一般道からサーキットまでこなすオールインワンなこれまでの作りから、速さを追求し、サーキットで楽しみたいユーザーにはNISMO、ストリートにおける快適性を考慮しつつ、欧州のプレミアムスポーツと対峙する質にウエイトを置いた基準車と明確に仕様がわけられるなど、まさに日産GT-R史において変革というべき出来事だった。
ちなみに2014年2月、正式に販売を開始したGT-R NISMOはIHI製大型ターボを装備することで600馬力まで出力を向上。スーパーGTのノウハウが活かされた専用エアロパーツを装着するなど、ひと目で高性能車というビジュアルを得たことで人気が出た。また、NISMOによるニュル北コースのタイムアタックを実施。Nアタックパッケージと呼ばれる専用オプションを装着したGT-R NISMOは、当時として量産車最速となる7分08秒679を記録し、新たな金字塔を打ち立てた。
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最高出力は480馬力から600馬力まで大幅にアップ。熟成により速くて扱いやすいマシンに
2016年に登場した2017年モデルはR35.5というべき大幅なマイナーチェンジを実施した。当時の日産共通デザインであるVモーショングリルを採用。空力性能をさらに磨き上げたエクステリア、制御を見直すことで570馬力まで向上したエンジン、ボディ補強など、変更は多岐におよんだが、とくにインテリアは運転席に座るとフルモデルチェンジしたのかと思うほどの変化。現代風のデザインへと刷新されたことで、「プレミアムGTカーとしての格を高めた。そのほかトータルで熟成が図られたことで、世界基準のスポーツカーへと返り咲くことに成功している。
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2020年モデルではGT-R NISMOに手が入れられた。ボディはこれまで前後バンパー、リヤスポイラー、サイドシルカバー、アンダーカバーのみだったカーボンパーツが、フェンダー・ルーフなどにも採用し、ボンネット、ルーフ、フロントフェンダーにまで拡大。さらにカーボンセラミックブレーキを標準採用することでバネ下重量を低減することで、高い運動性能と安定したブレーキ性能を担保。まさに公道のレーシングカーというべき存在に昇華した。
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2022年年末にはR33の伝説カラー「ミッドナイトパープル」とR34の最終限定車Nürに採用された「ミレニアムジェイド」を纏ったT-Specが数量限定で登場。100台の枠(最終的に120台まで拡大)であったが、抽選の倍率が40倍にも及んだこのモデルには、NISMOに採用されたボンディングボディやカーボンブレーキなどの特別アイテムを装備。トータルバランスが磨かれ、洗練された乗り味が好評を博した。
NISMOには精度を合わせた部品を選定して組み上げたファインチューンエンジンを搭載する「スペシャルエディション」を設定。専用色のステルスグレーとともに人気を博した。
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