架装を行う場合はとくに時間がかかる
現在発生している納期の遅れは、主に半導体の不足によるものである。きっかけは「コロナ禍」だ。世界的に起きたパンデミックで半導体工場生産力が低下し、電子部品として需要の高い半導体に不足が生じたのである。この問題は、自動車に限らず電機関連製品すべてに及んでいる。半導体の需要は増加の一途をたどっており、コロナ禍が落ち着いて生産体制が整った現在でも、慢性的な不足状態が解消されていない。
さらに追い打ちをかけているのが、車両メーカー各社の不正問題である。こういった問題が発生すれば生産停止になるなどして、解決、対策が優先されて生産力が低下するのだ。加えて、メーカーの需要予測が市場にマッチしにくくなったということも無視できない。ユーザーのニーズが多様化したことに加えて、即効性のある媒体(SNSなど)により目まぐるしくトレンドが変化する。正確な需要予測は容易ではない。
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この問題はトラックの場合、さらに複雑になっている。もともと、トラックは車両メーカーで架装される平ボディ、箱車といったポピュラーなタイプなら、乗用車に準じた流れになるので納車までそれほど待たなくてもよかった。ただ、架装メーカーで架装を行う場合は、それだけ余分に時間を要する。特殊な架装やオリジナル仕様の場合は、なおさらのことだ。
半導体の問題は車両メーカーだけではなく、架装メーカーにも深刻な影を落としている。また、トラックは車両や架装に必要な部品点数が多いことに加えて、特殊なものもあるので、半導体以外の原材料も慢性的に不足している。これは、2024年問題と同様に工場作業員の労働力不足が車両メーカー、架装メーカーだけではなく、多様な部品を生産する多くのサプライヤーレベルにまで及んでいるからだ。この納期遅延問題はひとつの原因ではなく、車両生産システムの構造的な問題になってしまっている。業界が一丸となって取り組む以外、解決の道は開けそうにない。