小川選手の素顔に迫る
──まずはラリー活動の話からお聞きします。ラリーを始めたのはいつからですか?
小川選手:2021年の11月に開催されたTGRラリーチャレンジの富士山裾野がデビュー戦になります。当時は病院のチームでラリー活動をしていて、ドライバーとして参戦していました。
──きっかけは何だったんでしょう?
小川選手:もともとはクルマが好きで、S15のシルビアを買ってドリフトをしていたんですよね。でも、クルマを壊したこともあったし、子どもができたこともあって、それどころじゃなかったんですけど、3人目の子どもができて落ち着いたときに競技をやってみたいと思うようになりまして。ちょうどそのころ、ラリー活動をしている病院の理事長から声をかけていただいて、2021年のデビュー戦につながりました。
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──なるほど。仕事関連の話はのちほどおうかがいするとして、その後はしばらくドライバーとしてラリー活動をしていたんですか?
小川選手:病院のラリーチームの方針として、女性ドライバーを起用していたんですけど、なかなかドライバーをやりたい人が出てきませんでした。しばらくして、ドライバーをやりたい女の子がでてきたので、それに合わせてコ・ドライバーとして活動することにしました。
──現在、全日本ラリー選手権にドライバーとしても、コ・ドライバーとしても出場していますが、全日本のデビューはいつだったんですか?
小川選手:2024年のラリー・ハイランド・マスターズです。ドライバーとしてトヨタ・ヤリスのCVTでJN-5クラスに参戦しました。
──今年は曽根選手のコ・ドライバーとして、GR86でJN-3クラスに参戦しながら、開幕戦のラリー三河湾と第4戦のモントレーは、ドライバーとしてもヤリスでJN-5クラスに参戦していますが、ドライバーとコ・ドライバーで役割が違いますよね?
小川選手:ドライバーはドライビングに集中しなければいけないし、コ・ドライバーはドライバーがいかに気もちよくスタート地点に立ってストレスなく走れるようにラリー全体をコントロールしなければいけないですからね。運転をするのはドライバーですが、ドライバーを勝たせるのも、クラッシュをさせるのもコ・ドライバーの影響が大きいので、個人的にはコ・ドライバーのほうが責任は重いと思っています。
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──確かにコ・ドライバーもミスはできませんよね。
小川選手:ドライバーのメンタルにも影響してきますからね。たとえばうまくマネジメントできてなくて、ギリギリのタイミングでSSのTCに到着したとしますよね。そういった焦らせてしまう状況を作っただけでタイムに影響してくる。ラリー競技ではドライバーだけがフォーカスされることが多いけれど、ドライバーだけが優秀でも勝てない。ドライバーとコ・ドライバーの両方をやるようになって、そう思うようになりましたね。
──シーズン中にコ・ドライバーとして参戦しながらドライバーとしてもスポット参戦していますが、やっぱり大変ですか?
小川選手:頭をドライバーからコ・ドライバーに切り替えるのが大変ですね。私がドライバーとして作るペースノートと曽根選手のペースノートは表現が違うので、コ・ドライバーとして参戦するときは曽根選手のペースノートに頭を切り替えて、リーディングのタイミングも変えています。
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──なるほど。逆にコ・ドライバーとして参戦しながら、ドライバーとしても参戦することで、相乗効果みたいなことはあるんでしょうか?
小川選手:曽根選手のコ・ドライバーをやったことでドライバーとしても劇的に速くなってきましたね。ここまで突っ込んでいいんだとか、コーナーの侵入速度が上がってきました。
──逆にドライバーとしての経験がコ・ドライバーに活かされたりするんですか?
小川選手:ドライバーの気もちがわかるので、ドライバーの気もちに寄り添って共有しています。曽根選手が大船に乗った気もちで戦えるように心がけていますね。
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──ところで、小川選手は普段の仕事は何をやっているんですか?
小川選手:いまはオーダーメイドのインソールの販売をしていますが、もともと介護士の資格をもっていたので、ラリーを始めたきっかけとなる病院のラリーチームには、フットケアアドバイザーとしてその病院と関わっていました。ドクターや看護師、理学療法士に足のケアの仕方などを指導していましたね。いまは自分の店舗をもっているので、ラリー活動のためにスケジュールを調整しながら仕事をしています。
──すごいですね。で、家に帰れば3児のママさんですよね? ラリー期間中、子どもたちはどうされているんですか?
小川選手:夫が面倒をみてくれますし、土曜日と日曜日は夫の両親もサポートしてくれているので助かっています。
──普段はママとして主婦と育児もやっているんですよね。大変ですよね?
小川選手:大変だと思ったら大変ですが、気のもちようですね。
──仕事や主婦&ママをやりながら、ラリー活動を続けるのはハードだと思うんですけど、ラリー競技の魅力はなんですか?
小川選手:やっぱり、チーム競技というところですかね。ラリー競技ではドライバーやコ・ドライバーに加えて、メカニックやいろんな手伝いをしてくれるサービス員も必要で、誰ひとり、欠けることはできないんですけど、みんなが仕事をして、それで完走できたときの達成感はほかに変えがたいところがあります。結果がよければ涙が出るくらい嬉しいし、僅差で負けたら悔しい。そういった部分が面白いですね。
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──ふむふむ。そのほかに魅力はありますか?
小川選手:私は硬式テニスでインターハイに出たりしていたんですけど、テニスではラケットやガットのポンド数や貼りかたを変えたりするんですよね。そういったデータを取りながら試合をしていくんですけど、ラリーもタイヤや足まわりなどセッティングが幅広いですよね。そういったものを使って競技をするところも魅力的です。ドライビングだけでなく、クルマのことを理解した上で、セッティングを考えていくところが面白い。あとは成長していくことが目に見えてわかるところですね。大人になって成長することはあまりないけれど、ラリーでは着実に成長していけるので、そういったところも面白いですね。
以上、簡単に小川選手を直撃してみたが、小川選手は若いころの藤原紀香さんを彷彿とさせるような美人さん。しかもシュッとしている小川選手は以前、キャンギャルとしても活動していたらしく、なかなかのマルチタレントぶりである。
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