革新的なクルマ作りが経営不振を招いた
ルフェーブルは、パワートレインがフロントで完結するので、リヤまで支えるフレームは不要と判断。キャビン全体で剛性をもたせ、前端から伸びる2本のサブフレームでパワートレインを支えた。おかげで車体は低くスマートになり、低重心なので操縦安定性もハイレベルになった。
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ところが2人のアンドレの革新的なクルマづくりが影響して、シトロエンは経営不振に陥り、トラクシオン・アヴァンを発表したその年にミシュランの傘下になった。アンドレ・シトロエンは失意のなか、翌年この世を去った。
しかしミシュランはトラクシオン・アヴァンの設計思想を評価し、生産を続行。並行して後に2CVになるベーシックカーの開発を進め、続いてトラクシオン・アヴァンの後継車のプロジェクトもスタートした。これがDSだ。
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たしかにDSのデザインやテクノロジーのインパクトは並外れたものだった。しかし前輪駆動モノコックが一般的になっている今の自動車業界を見ると、トラクシオン・アヴァンが与えた影響は、DSに負けず劣らず大きかったと思っている。