「ムーヴ」がスライドドア化してライバルの「ワゴンR」ピンチか……って思ったけどいまのままでもイイぞ! ワゴンRを改めて評価してみたら魅力たっぷりだった (2/2ページ)

ポテンシャルは今でも高い次元にあり

 そんなワゴンRに乗り込んでみると、クラス最大級のホイールベースによる、今でもハイセンスに感じられる室内空間のデザイン性のよさ、ゆとり、そしてなんといってもセンターメーター採用によるすっきりとした運転視界、ちょっぴり先進感ある上質さをインテリアに表現している。

 後席の居住性もクラス最上級で、リヤドアの開口部が広く、ステップからフロアに段差がなく、シート位置が高めにセットされていることで(ヒール段差350mm。新型ムーヴは300mmでしかない)、乗降性は抜群。とくに降車性はシートからの立ち上がり性に配慮されているためクラス最上の部類。後席足もとのゆとりもクラス最大級で、長身の大人でもゆったり寛げる空間が確保されている(ここに関しては新型ムーヴも同様)。

 具体的には、身長172cmの筆者のドライビングポジション基準でワゴンRは前席頭上に230mm、後席頭上に145mm、膝まわりに最大320mm(160mmのスライド位置による)もある。ヒール段差はすでに説明したように、クラスでもっとも高い部類の350mmである。

 以上はワゴンRスマイルも同じ。ちなみに新型ムーヴは前席頭上に220mm、後席頭上に195mm、膝まわりに最大340mm(スライド位置による)という、ワゴンRの上をいくスぺ―スを確保している。

 ただし、後席頭上に余裕があるのは、シートを低めにセット(ヒール段差300mmがそれを表している)しているからだ。個人的には太腿部分がしっかりとシート座面に密着した自然な椅子感覚のかけ心地が得られ、座りやすく、立ち上がりやすいワゴンRのパッケージが好ましく感じられるのだが……。

 リヤヒンジ式ドアのワゴンRとリヤスライドドアの新型ムーヴは、当たり前だが、車重で差がある。ワゴンRは標準マイルドハイブリッドNAモデルで770kg。カスタムZのターボモデルでも800kgでしかない(2WD)。一方、新型ムーヴはNAのメイングレードなるXで860kg。唯一のターボモデルとなるRSで890kg(2WD)となり、車重差はムーヴがスライドドアを採用したこともあって、60~90kg重くなってしまうのである。

 さて、ワゴンRのマイルドハイブリッドとなるNAモデルの走りだが、出足から滑らかに静かに加速し、乗り心地はしっかり&しっとりで上質。プラットフォームの剛性の高さからサスペンションがよく動き、段差や荒れた道を走破してもショックを一発で吸収し、不快な振動を残さないため、じつに快適だ。

 操縦性に関しても、パワーステアリングは適度な重さで安心感があり、しかも切っていったときの自然な操舵フィールが好ましく、運転のしやすさ、気もちよさは想像以上。先代より運転席が15mm低まったこともあり、たとえばカーブ、山道、高速レーンチェンジなどのシーンでより低重心感覚ある安定した走りが可能になっている。

 動力性能は軽量な車重を生かし、市街地、平たん路では必要十分。高速走行や山道(の登坂路)を走る機会が多いというなら、もちろんターボモデルを薦めることになる。そのターボモデルは出足の滑らかさ、全域の静かさ、軽めのステアリングが織りなすリニアでウルトラスムースな手応え、扱いやすさ、そしてエンジンをまわしたときの気もちよさ、爽快感、クラスを超えた上質な乗り心地、高速走行での余裕、静かさなどなど、さすが軽ハイトワゴンのパイオニアならでは質感で、それはデビュー8年目の今でも決して古臭さを感じさせない仕上がりといっていい。

 さらに、カーブや高速レーンチェンジでの軽快感に満ちた身のこなし、安定感も文句なし。横基調のモダンなインパネデザインによる、より幅広いクルマに乗っているかのような疑似感覚は、高速走行でのリラックス度に大きく貢献してくれるほどである。

 今となってはワゴンRのライバルは日産デイズ、三菱eKワゴン、ホンダN-WGNとなり、両側スライドドアを備えた新型ムーヴは除外されてしまうのだが、スズキは真正ハイトワゴンのワゴンRとワゴンRスマイルの二刀流でこのジャンルで競うことになる。スライドドアに抵抗がある、スライドドア車の割高な価格はゴメン!! という人にとっては、リヤヒンジ式ドアのワゴンRのような軽量ミニマムワゴンにもっと注目していいと思える。

 ただし、WLTCモード燃費を紹介すると、ワゴンRはHYBRID FX-S(146万3000円)で25.2km/L(2WD)。新型ムーヴのX(149万500円)はスライドドア車でもさすが新しいだけあって25.3km/L(2WD)を達成。ヒンジドア車と同等の燃費性能を実現している。しかし、いい方を変えれば、8年前のデビューにして、最新のムーヴと同等の燃費性能をもつ……ということでもある!?


この記事の画像ギャラリー

青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

新着情報