「トラック新法」が値下げ競争に法的歯止めをかける仕組み
今回のトラック新法の柱のひとつ「適正原価を下まわる運賃・料金の制限」は、こうした荷主側と運送会社の間で発生していた値下げ競争に法的に歯止めをかける画期的な対策だ。「トラック事業の許可更新制の導入」により事業者の許可を5年ごとの更新とし、国交省が現状の人件費や経費などを積み上げて「適正原価」を算出。運賃がこれを下まわっていないか更新時に確認し、適正原価を支払わない荷主は是正指導の対象となる。
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トラック新法成立前の近年は国交省の「トラック・物流Gメン」がこの荷主・運送会社間の運賃・料金などを監視。ウェブ上の「目安箱」の設置やサービスエリアなどでドライバーに聞き取りを行うなど情報収集を行い、悪質な荷主には働きかけや要請という形で是正を文字どおり行ってきた。
これに従わない荷主には勧告を行い、社名を公表するというペナルティを与えていたが、その効力はさほど強くなく、公表された荷主のなかには、誰もが知る大企業も複数存在する。驚くべきことに運送業者の最大手もこの「勧告」と「公表」を受けていた。
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トラック新法の成立、施行により、トラック事業者の運賃原価割れの法的な規制がより厳格に行われることで運賃が適正化され、それが賃金・待遇の改善という形でトラックドライバーの利益と仕事へのモチベーション向上、さらには若手ドライバーの増加につながっていけば幸いである。
また、その運賃の適正化によって、運賃自体の値上げも当然ありうる。その運賃の適正化=値上げは今後、わたしたち消費者にも通販の送料上乗せや商品の価格上昇になりうることを承知しておかなければならないだろう。
この「トラック新法」についてだが、今回の運賃の対策のほか「トラック事業の許可更新制」や「白トラの委託の禁止」といった新たな規制の内容や具体的な施策についても、また改めて考察していきたい。