筆職人も減りつつあるいまトラックの箱絵はどうする? ボディに直プリントするプリンターが解決! (1/2ページ)

この記事をまとめると

■ペイントの自動化は手描き文化の衰退への危惧がきっかけだった

■「粘性の高いインクを遠くへ飛ばす」という特許技術が広範囲のペイントを可能にした

■トラックのボディに広告を掲載し「動く広告媒体」としての運用も

アートトラックのボディペイントを自動で行う技術が誕生

 トラックのボディ(荷台)は、社名が大きく記されたり、アートトラックならオーナーの好みを映した絵柄が描かれたりと、車両の個性をもっとも強く表す部分のひとつだ。そんなデザイン手法に、新しい流れが生まれている。それがリコーデジタルペインティング株式会社が開発した「オートボディプリンター」という技術である。

 これまでトラックのボディにグラフィックを描く場合、職人による手描きやエアブラシ、またはステッカーやラッピングという手法で行っていた。そこにマシンを使って自動的にペイントを行ってくれる装置として登場したのがオートボディプリンターだ。

消えゆく「筆職人」の文化を見越してオートボディプリンターを開発

 このオートボディプリンターの歴史は長く、実際に稼働した初号機の登場は1988年。そこには創業者の熱い思いが込められていた。オートボディプリンターの生みの親は、リコーデジタルペインティング株式会社の前身である「株式会社エルエーシー」という塗装印刷会社だった。

 オートボディプリンターが登場する以前、映画館の看板や店舗のシャッターは「筆職人」と呼ばれる人々の手によって、ひとつひとつ丁寧に描かれていた。しかし、やがて手描き文化の衰退を見越したエルエーシーの創業者がペイントの自動化を構想。その結果、誕生したのがオートボディプリンターなのである。

 この製品は、さまざまなデザインのペイントを自動で行うマシンだが、注目すべきはそのノズル部分。「粘性の高いインクを遠くへ飛ばす」という特許を取得しているのだ。通常のプリンターは上から下方向へとインクを飛ばすが、この特許により数cm~数十cmの距離で横方向へのプリントが可能となった。そして、横方向へインクを飛ばす技術がトラックの荷室側面部分にペイントすることを可能にしたのである。

 とはいえ、このオートボディプリンターは、トラック塗装専用のマシンではない。たとえばシャッターなどの大きな面積なものはもちろん、ブロックやコンクリートといった建築用資材にも使用できる。過去には航空機のエアバスの垂直尾翼やビル全体への塗装実績もあるというから、その汎用性の高さには驚かされる。


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