タイプRを作るのにホンダは全力投球だった
そうした特別な運転感触を、NSXのような高額のフラッグシップスポーツカーだけでなく、多くの消費者も体験できるようにしたのが、1995年のインテグラ タイプRであり、97年のシビック タイプRになる。ことにシビックは、今日までタイプRが存続している(ただし現在は注文受付を一時停止中)。
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NSXでのタイプR誕生のあと、ホンダは北海道に鷹栖プルービンググラウンドを建設した。場内には、ドイツのニュルブルクリンクの一部分を模したようなワインディングコースがある。ここは、鷹栖のなかでももっとも早い93年に完成した目玉の施設だ。
ニュルブルクリンク北コースの20kmには及ばないが、鷹栖の6km強のコースでは、単に高低差のある屈曲路やジャンピングスポットだけでなく、先を見通し難い箇所があり、それらはまさにニュルブルクリンク同様の緊張を運転者に与える。
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見えない先で何が起こっているか、警戒しつつ、目の前に起きる事態に対処できる運転技量だけでなく、車両側にも即座に対応できる応答性が求められる難所だ。まさにレース車両に匹敵する操縦性でなければ、全力での走行は不可能なコースになっている。
ミッドシップのNSXであろうと、前輪駆動のシビックやインテグラであろうと、車両が本来持つ運動特性によらず俊敏さを鍛え上げたのがタイプRであり、そこがまるでレーシングカーのようだと評される所以でもあるだろう。