FFレイアウトを得た「EA276」が初代ゴルフへと結実
直列4気筒を横置きしたミッドシップ2ボックスカー、266は高評価を受けて量産計画までまとまったようですが、新たな社長となったルドルフ・ライティングが待ったをかけました。ライティングは生産管理部門からトップに昇りつめたというキャリアの持ち主で、266の生産はコストがかかることを見抜いていたのでした。また、エンジンのメンテナンスにも床下収納は不便であることなどを挙げ、266はボツ。ピエヒの悔し涙が目に浮かぶようです(笑)。
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次いで、276はよりコンベンショナルなフロントエンジン、フロントドライブというパッケージとされ、リヤにはトーションビームサスペンションが採用されるなど、実際のゴルフにほど近い試作車でした。が、搭載を想定していたエンジンは、なんと空冷フラット4。たしかにコストは抑えられるものの、信頼性やら排ガス対策やら新時代を迎えるにはいささか心もとないわけです。
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それで、276にNSU(のちのアウディ)が作った直4エンジンさえ載せればモノになりそうだと、社内の意見がまとまりかけたのですが、ここでもライティング社長が「カッコ悪いからなんとかして」と鶴のひと声。ここから先はご承知のとおり、ジョルジェット・ジウジアーロがスタイリングをまとめていくのですが、276はたしかにスタイリッシュとは呼べないものの、量産型の面影もあるっちゃありますよね。
ゴルフ生誕50周年を迎えたVWが、266と276を大々的に露出させていましたが、こうしてみるといずれのモデルも歴史のあだ花とするには惜しいもの。当時のエンジニアたちの必死なあがきが垣間見えるような気がします。