ゴム製ベルト全盛になった「タイミングベルト」に変化の兆し! 最近「タイミングチェーン」が復活しつつある理由 (2/2ページ)

タイミングベルトはピストンとバルブの動きを連携させる重要パーツ

 その関係を成り立たせるのがタイミングベルトだ。ピストンの上下動にかかわるクランクシャフトと、吸排気バルブの開閉をつかさどるカムシャフトを結び、上下動と開閉の時期を合わせるベルトである。クランクシャフトとカムシャフトの端それぞれに外周に歯の付いたプーリーがあり、相互のプーリーをつなぐのである。

 かつてこれを行ったのは、自転車などで使われる金属チェーンだった。しかし、走行を重ねると調整が必要だったり、チェーンがプーリーの歯と噛み合う際などに騒音があったりして、より上質な商品性を求めゴム製のベルトに転換された。それも単なるベルトではなく、プーリーの歯と噛み合う凹凸のあるコッグドベルトと呼ばれるベルトの採用によって、チェーンと同じようにピストンの上下動と吸排気バルブの作動を正確に合わせてきた。

 自転車でも、金属チェーンではなくベルト駆動とすることで走りが静かになる商品もある。一方、ゴムは金属に比べ劣化が早く定期的な交換が必要になる。クルマのエンジンの場合ではおよそ10万kmが目安とされる。

 ところで、1990年代以降、ことに2000年以後は、燃費に対する規制がより厳しくなり、ダウンサイジングターボエンジンやマツダのSKYACTIVに代表される高圧縮比エンジンが不可欠になってきた。高圧縮比では、ピストンとバルブの衝突の可能性がより高まる。

 強度確保のためベルト幅を広めにしなければならなかったコッグドベルトでは、エンジンの小型化が難しく、高圧縮比に対するより精緻なバルブ駆動の作動のためにも、耐久性に優れるチェーン駆動が見直されだしたのだ。

 あわせて、サイレントチェーンと呼ばれる静粛性を高めたチェーンが開発されたことにより、タイミングチェーンが復活することになった。一方でコッグドベルトも幅を抑えながら強度を増した製品が開発されるようになり、すべてがチェーン駆動となったわけではない。いつの世も強力な競合が現れると、互いに切磋琢磨しあってさらによい製品が生まれてくるのである。


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御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター

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