この記事をまとめると
■2014年にノアとヴォクシーの兄弟車として発売されたのがエスクァイアだ
■ノアとヴォクシーとは異なる特徴として大きなフロントグリルが与えられていた
■グリルの迫力とボディサイズのマッチングがアンバランスで1代限りで消滅してしまった
ノア&ボクシーの兄弟車「エスクァイア」
ミニバンブーム真っ盛りの2014年にトヨタから発売されたMクラスボックス型ミニバンが、トヨタの説明では”広い室内空間を追求した5ナンバークラスミニバンにワンランク上の高級感を付与した、新上級コンパクトキャブワゴン”となる「エスクァイア」だ。
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もちろん、完全新設計ではなく、基本部分は当時のノア&ヴォクシーそのもの。つまり、ノア、ヴォクシーに次ぐ3車種目の兄弟車ということになる。でも、なんでプラットフォームを共通する3台ものミニバンが必要だったのか? その答えは単純。それまでトヨタ/トヨペット店ではノア&ヴォクシーをもたなかった(販売していなかった)ため、トヨタ/トヨペット店専売のMクラスボックス型ミニバンとしてエスクァイアが加わったというわけだ。
ノア&ヴォクシーとの違いは、エアログレードがなく5ナンバー車のみの展開という点と、顔つきにクラウン・マジェスタにも匹敵する迫力を発散するデカいフロントグリルを用いていること(リヤビューはけっこうフツー)。いい方を変えれば、エスクァイアの特徴、個性のひとつがそこに集約されているのである。
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第三のMクラスボックス型ミニバンを企画するにあたって、トヨタ/トヨペット店専売車種に相応しいワンランク上の高級感を、まずはフロントグリルに与えたというわけだ。
とはいえ、空前のミニバン人気から、後追いで企画したわけではない。じつは2014年デビューのR80型3代目ノア&ヴォクシーと同時開発されていたのである。
よって、プラットフォーム、パッケージング、エンジン、ミッションなどはすべてヴォクシー&ノアと共通。しかし、デザインで差別化を計っているのが特徴であり、インテリアもまた同様だ。基本デザインはヴォクシー&ノアに準じるものの、ステッチが入る合成皮革張りのソフトパッドが随所に奢られ(助手席前のオープントレー部分に注目)、ピアノブラックの加飾パネルなどとともに高級感、上級感を演出。誰が見ても、乗っても「ヴォクシー&ノアより車格感は上に感じるよな」という差別化が図られた仕立てだったのだ。とくにバーガンディ&ブラックの2トーンの内装色、本革風の合成皮革シートが奢られたダークカラーのエスクァイアは、VIPカーとしても通用しそうな存在感があった。
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ただし、筆者の当時の試乗メモを読み返せば、「7人乗りの2列目席に81cmものロングスライド機構が備わり、スーパーリラックスモードにすれば後席にはリムジン、ファーストクラス的な独立4座の居住空間が出現するのはノア&ヴォクシー同様に褒められる点で、それこそクラウン・マジェスタの後席を圧倒するものの(乗り心地は別)、合成皮革シートはアレンジありきで、平板なシート形状になる3列目席だと腰や背中がツルツル滑りやすく、着座の落ち着き感に欠けるのが難点。3列目席に誰かを座らせ長時間、長距離走行する機会が多いなら、高級感やデザイン性はあきらめてファブリックシートを選ぶべきだろう(1/2列目席であれば気にならない)」