ノア&ヴォクシーの末弟「エスクァイア」! 「ミニアルファード」がたった1代で消えたワケ (2/2ページ)

ミニアルファード的な「謎の存在」となり人気を得られず

 エスクァイアを走らせれば、走行性能はノア&ヴォクシーと変わるところはない。いいところも、気になるところも、である。

 筆者の試乗メモによれば、「エスクァイアの場合、強くお薦めしたいのはHVのほうだ。ノア&ヴォクシーのガソリン車(当時)は乗降性抜群の低くフラットなフロアが荒れた路面でブルブル震えるウイークポイントがあるのだが(当時)、HVのほうはモーターによるバネ上制振制御でそれが低減され、EVモードによる静かでクルマのキャラクターに合う、より上級感ある走りの質、乗り心地が得られるからだ」。「乗り心地は内外装ほどラグジュアリーではないけれど、それでもスーツ姿やVIPが似合うこのクラスのミニバンは、このエスクァイアだけ」と記されている。

 では、エスクァイアの価格はノア&ヴォクシーに対してどんな関係にあったのだろうか。2014年モデルの例では、ガソリン、HVともに、ノア&ヴォクシーの同グレード比で15万円高の設定だった。内外装の仕立てや細かい装備違いを考えると、決して高くはなく、どころか、「ノアはいかにもファミリー向け。エアロルックのヴォクシーはちょっと若すぎ……」と感じていたトヨタのMクラスボックス型ミニバン狙いの人にとっては、顔さえ気に入れば、けっこうお買い得かもしれないのがエスクァイアだったのだ。

 なお、ガソリン車は高効率のバルブマチックやSuper CVT-iなどの採用で、当時のこのクラスのガソリン車でトップレベルの環境性能(2WD車のJC08モード燃費:16.0km/L)を実現。ハイブリッド車はより優れた環境性能(JC08モード燃費:23.8km/L)を発揮していた。

 2014年にノア&ヴォクシー軍団に加わったエスクァイアはその後、2016年に一部改良し、運転支援機能のトヨタセーフティセンスCを全グレードに標準装備。2017年にも主に装備の充実を図ったマイナーチェンジが実施されている。

 そんなエスクァイアは2022年1月、ノア&ヴォクシーの4代目の登場をきっかけに販売を終了。約7年の歴史に幕を閉じ、ノア&ヴォクシーに比べ短命に終わったことになる。その理由はいくつか考えられ、まずは中世ヨーロッパの従騎士の盾と矛、紳士のスーツ姿の襟元をモチーフにしたと言われる顔つきを与えた、”顔だけ”クラウン・マジェスタ並みの迫力と5ナンバーボックス型ボディのマッチングの不自然さ、ミニアルファード的な、”謎の存在”に見られていたことも、それほどの人気を得られなかった理由だったかも知れない(当時はエスクァイアの新車価格で中古アルファードも買えた)。

 そして2020年、東京都を除く地域でのトヨタ全車種併売化がスタートし、エスクァイアがトヨタ/トヨペット店専売車種ではなくなったことも影響しているはずである。

 2025年8月下旬時点でカーセンサーを検索してみると、1380台の中古車がヒット。初期型の2014年モデルで100万円前後で手に入るものの、2020年式以降になると、いまでは買えない車種だからだろうか、HVモデルだといきなり200万円台後半の強気の価格設定になっているようだ。


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青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

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