マツダの直6ディーゼルはHVO対応も織り込み済み
注目したいのは、HVOが軽油と似た特性をもっていることだ。ガソリンと違って引火しづらい特性をもつ軽油は、200リットル未満であれば届出不要で保管することができる(ガソリンの場合は40リットル未満)。
平野石油が用意する簡易給油機のタンク容量は190リットルであるため届出不要で、地下駐車場にも設置できる。危険物取扱者なども不要で、誰でも簡単にセルフ給油することができるというのも、企業などでは導入しやすいポイントといえる。
さらに、この簡易給油機は100Vの電源で動くので特別な配線作業も不要。外に設置するのであれば太陽光発電で動かすこともできるという。さらにIoTを使って燃料が残り少なくなると、平野石油が補給するといった仕組みをつくることも可能という。
平野石油が用意する簡易給油機画像はこちら
というわけで、燃料の特性としては扱いやすいのがHVOであり、それを軽油と混合した「サステオ51」についても同様の特徴をもっている。そこで気になるのは、エンジン側の対応だ。
HVOの特性がほとんど軽油同等といっても、じつはセタン価(自己着火のしやすさを示す指標)が異なる。軽油のセタン価はおおよそ45~56だが、HVOは75以上となり、すなわちHVOのほうが着火しやすい。
クリーンディーゼルとして、排ガス浄化性能を考慮すると、このセタン価の違いは無視できない。しかし安心してほしい。マツダは、CX-60やCX-80に搭載される最新の直列6気筒ディーゼルエンジンを開発する段階で、カーボンニュートラルへの有効なアプローチとしてHVOの普及を考慮している。つまり、従来の軽油でもHVOを入れても、もちろん「サステオ51」を使っても、問題なくエンジンが動き、排ガスがクリーンになるよう設計されている。
バイオ燃料を給油されるマツダCX-80画像はこちら
そしてマツダの試算によると、HVO100%の燃料を使った場合のCO2削減効果は、バッテリーEVを大きく上まわるという。HVOの生産コスト次第では、カーボンニュートラルへ向けた決定打となる可能性があるのだ。
冒頭で、資源エネルギー庁によるプレゼンテーションに触れたが、2050年カーボンニュートラルを目指す日本ではあるが、エネルギー密度を考えたときに脱・液体燃料は無理筋と考えているようだ。航空機や船舶、大型トラックなどはカーボンニュートラル燃料を使うことが現実的な解となるのは、国民の共通認識としてもっておくべきだろう。
その点で重要なプレーヤーとなるのがいすゞだ。すでにHVOを使った燃料で走る通勤バスを運行しているように、カーボンニュートラル燃料に対応したディーゼルエンジンの開発に意欲的だ。
HVOで走行するいすゞ製路線バス画像はこちら
よく環境技術については「ニワトリと卵」にたとえられることがある。技術があってもユーザーが増えなければ実用的にならないからだ。その意味で、カーボンニュートラル燃料を使うユーザーが増えてくれば、供給網も増えるだろうし、コストダウンも期待できる。全国のバスやトラックがカーボンニュートラル燃料で走るようになれば、普及も進むだろう。
少なくとも、HVOに対応したマツダの6気筒ディーゼル車に乗っているユーザーであれば、カーボンニュートラル燃料をドロップインしても問題なく走れるわけで、非常に現実的な「今日から実現できるモビリティのカーボンニュートラル」となりえる。将来性が期待できるHVOの今後に注目していきたい。