【試乗】純粋なアルピナ車はもう最後! D3 Sツーリングに乗って感じた「替えがきかない」走り (2/2ページ)

究極のパフォーマンスとラグジュアリーを両立する唯一無二の存在

 インテリアもまた魅力的な仕上がりだ。メーターパネルとそのグラフィックは、D3 S独自のものであるし、ベースのG20型3シリーズが、マイナーチェンジ時にトグル式シフトレバーを採用したのに対して、アルピナは操作性を重視してあえてこれまでどおりセンターコンソール上にそれを配置。オプションのアルピナ・ラグジュアリー・パッケージが選択された、贅を極めたともいえるキャビンに身を委ねていると、それだけで幸せな気分になるのはもちろんのこと、走りへの期待感もさらに大きくなる。

 フロントに搭載されるパワーユニットは、2993ccの直列6気筒ツインターボディーゼルエンジンに48Vのマイルドハイブリッドシステムを組み合わせたもの。

 じつは日本仕様のBMW3シリーズ・ツーリングのラインアップでは、このパワーユニットの選択は不可能で、それもまたD3 Sツーリングにとっては大きなセールスポイントとなっている。

 エンジン・マネージメントを始め、吸排気システムなどはアルピナによってさらに改良され、結果として得られた最高出力と最大トルクは、それぞれ355馬力・730Nmという数字。こちらもシフト制御が見直された8速ATとの組み合わせによる加速感は、2020kgと発表されている車重を感じさせないほどに力強いものだった。

 だが、D3 Sツーリングの魅力はこれだけでは終わらなかった。その走りのなかで常に意識させられたのは、むしろシャシーのセッティングの素晴らしさで、とりわけアルピナが独自にセッティングした「コンフォートプラス」のドライブモードをチョイスしたときに得られる乗り心地の素晴らしさは、感動的と表現するほかはない。

 ドライバーはさらに「コンフォート」、「スポーツ」、「スポーツプラス」、そして「インディビジュアル」の各モードを、自身の好みやシチュエーションに応じて使いわけることができるが、もっともスポーティなスポーツプラスを選んでも、その印象が大きく変わることはなかった。

 アルピナというブランドが常にカスタマーに提供してきたもの。それは究極のパフォーマンスとラグジュアリーをきわめて高い次元で両立させた、唯一無二ともいえる世界だった。それが終焉を迎えるのはあまりにも惜しい。


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山崎元裕 YAMAZAKI MOTOHIRO

AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員 /WCOTY(世界カーオブザイヤー)選考委員/ボッシュ・CDR(クラッシュ・データー・リトリーバル)

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