プロだからこそ感じるプライドとマナーのズレ
まずひとつめは、仕事に対するプライド面。フルサイズの大型車は全長12メートルに達するが、対する一般的な大型ダンプは全長が8メートル弱となる。それゆえに、運転技術で同列と考えられたくないドライバーが多いようだ。
「ダンプは全長が短いし、走る距離も知れているじゃん。それに自分の手で荷物を積み下ろしするわけじゃなく、1本のレバーを操作するだけ。それで同じようにトラック乗りを気取られるのは、おかしいと思うよね。もちろん俺らとは稼げる金額が違うから、ダンプに乗って楽をしたいとは思えないけど(現役長距離ドライバーAさん)」。
とはいえ、ダンプを見下しているわけではない。仕事をするたびに砂まみれになる車両のメンテナンスが大変であり、ときには整地されていない悪路を走ることもある。そのようなダンプの苦労を認めつつ、同じように扱われるのは嫌だというのだ。
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そしてふたつめの理由は、運転マナーの問題。単価の安いダンプは回数をこなさなければ売り上げが立たない傾向が強いため、多少無理をしてでも早く行こうとするケースが多いのだ。
「よくトラックドライバーのマナーが悪いとか運転が荒いといわれるけれど、原因の大半はダンプじゃないかな。ダンプは同じコースを1日に何度も走って渋滞箇所を熟知していて、全長が短く割り込みしやすいから、車線の絞り込みで強引に割り込んでくるんだよね。早く目的地に到着したい気もちはわかるけどさ、こっちは急ブレーキで荷崩れする危険があって無茶な運転はできないし、たまったもんじゃない。荷崩れの心配がないダンプと一緒の扱いをされたら、納得できないよね。こちとらプロドライバーの誇りをもってハンドルを握っているけど、ダンプにそれを感じたことは、一度もないから(現役中距離ドライバーBさん)」。
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そんなAさんとBさんが口を揃えて発した3つめの理由は、ずばり過積載。ダンプの単価は基本的に安いため、規制が厳しくなった現代でも過積載運行が横行しているというのだ。
「さし枠と呼ばれる鉄骨を箱の横に積み上げてさ、荷室を拡張したダンプは悪質だよね。リーフ増しという改造で、過積載を計画的に行うダンプも多いよ。それで事故を起こすから、うちら荷主が過積載を許さない運送会社でも変な目で見られて、過積載の検問で時間を取られる。誤解されたくないのは、いまの時代は会社ぐるみで過積載をする運送会社はほぼないよ。だから、同じ扱いをされたくないんだよ(前出Aさん)」。
ダンプのドライバーに憤りをもつトラックドライバーは多く存在するが、逆にダンプのドライバーがトラックドライバーを悪くいうケースはほぼなかった。自身でも悪いと認識しながら、やむなくそういった運転をするダンプが多いとしても、プロである以上は法令やマナーを遵守してもらいたいものだ。
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そんなダンプカーのドライバーにも評判が悪かったのは、海上コンテナを運ぶトレーラー。その理由は、やはり運転マナーの問題であった。
「海上コンテナのトレーラーは、とにかく怖いね。どこから突っ込んでくるかわからないし、速度超過もよく見かけるよ。港なんかめちゃくちゃだもん。でも仕方ない部分があるんだよ。コンテナを搬入できる時間を過ぎたら受け入れてもらえないんだ。海上コンテナは船で外国へ運ばれるんだけど、週に1便しかない航路もあるから、時間に間に合わないと搬入が1週間遅れちゃうんだよ。ヤードの渋滞も酷いし時間が勝負の仕事だから、腹がたつというより同情しちゃうよね(前出Bさん)」。
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トレーラーであるだけに技術面をとやかくいう人は少ないが、やはり強引な運転を批判する声が多かった。しかし、マナーの悪い無茶な運転の責任を、ドライバーだけに押し付けてもいいのだろうか。プロドライバーである以上、プロとしての自覚と誇りをもってほしい。それと同時に、プロがプロらしくあれるような環境の整備を願いたいところである。