国をあげて中国ブランド車を世界に宣伝
2022年に北京で開催された冬季オリンピックではトヨタが車両提供を行っていたが、これはIOC(国際オリンピック委員会)と最高位スポンサー契約を結んでいた(いまは契約終了)からで、中国政府や中国企業などが主導するイベントでは、中国メーカー車が公式車両として指定されるのが一般的となっている。
2022年にインドネシアのバリ島においてG20サミット首脳会議が開催された。インドネシアは世界屈指の自動車生産国であるが、世界的な自国量販ブランドはもっていない。そんなインドネシアでもG20公式車両は指定された。韓国ヒョンデ系高級ブランド「ジェネシス」のG80、ヒョンデ・アイオニック5、ウーリン(上海通用五菱汽車)エアEV、レクサスUX300e、トヨタbZ4Xの5台となり、いずれもBEVとなっている。
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自国ブランドを持たないインドネシアだが、インドネシア国内に生産工場をもち、インドネシアの自動車産業に積極的な姿勢をみせる、日本、韓国、中国メーカーへの配慮を見せた政治的判断ともいわれ当時話題となった。
今回の軍事パレードでの様子などを見ていると、プーチン大統領は自国から専用車両をもち込んでいたし、金総書記も専用車両(マイバッハ)だったようだが、多くの海外から招待されたひとは紅旗車で滞在中移動したようである。
ちなみに軍事パレードのとき、金総書記がプーチン大統領専用車に一緒に乗り込むというシーンが映し出された。過去にプーチン大統領とおそらく同じセキュリティレベルの同型車を金総書記は贈られており、以降この車両を自国内の視察の際に使っているシーンを何度かニュース映像で見たことがある。クルマ好きで知られる金総書記のお眼鏡にもかなったようである。
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過去に中国で行われた国際会議にて、招待した各国首脳を習近平国家主席が会場で出迎えるというシーンを中国メディアのテレビ報道で見たことがある。華やかに演出されたクルマ寄せに最新の紅旗ブランドの高級サルーンが次々と横づけされ、そこから各国首脳がそれぞれ降りて習近平国家主席と握手をしていた。世界から招待した首脳を乗せた、中国車最高ブランドといってもいい紅旗車が横づけされ、そこから降りてきた賓客が習近平国家主席と握手をする、このようなシーンは国威発揚につながり、中国のひとたちの愛国心も増していくことになるだろう。
中国という特殊な政治体制下、政府はさまざまな手法で国威発揚を行い、中国人の愛国心というものを確実なものとするよう試みてきた。そのなかで、過去には中国人は中国車にソッポを向いて、西ヨーロッパや日本、韓国車に乗っていたが、中国車自体の大幅なレベルアップもあるが、いまでは需要の中心は完全に中国メーカー車となり、中国車に乗ることを誇りのように思っているようにも見える。中国において西ヨーロッパ車、日本車など海外ブランド車は、そのガラパゴス化(中国メーカー主流)する市場にとまどい、販売も苦戦しているように見える。
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日本では政治色の強いイベントでまず表立っては公式認定車両を設けるようなことはないようだが、中国では国家的なイベントで、例え紅旗ブランド車だけとはいえ中国車が活躍するということは、中国車全般の販売促進にはおおいに効果のあることなのだと筆者は考えている。