この記事をまとめると
■全日本ジムカーナ選手権第7戦「スーパースラロームIN久万高原」が開催された
■PN3クラスではトヨタGR86とスバルBRZとマツダ・ロードスターがしのぎを削っている
■GR86とロードスターでチャンピオンとなったことがある選手にどちらが速いかを聞いた
全日本ジムカーナ選手権でトップ争いをするロードスターとGR86
全日本ジムカーナ選手権・第7戦「スーパースラロームIN久万高原」が9月13〜14日、愛媛県久万高原町のハイランドパークみかわで開催された。各クラスで激しいバトルが展開されていたのだが、筆者がもっとも注目していたのが、PN3クラスにほかならない。
エンジン排気量が1500cc以上で2輪駆動のPN車両(FIA/JAF公認発行年またはJAF登録年が2009年1月1日以降の車両)で争われるPN3クラスでは、トヨタGR86(ZN8)とスバルBRZ(ZD8)、そしてロードスター(RF)の3モデルが激突。アバルト124もエントリーしているが、主流となっているのは、GR86/BRZとロードスターで、常にこの3車種がトップ争いの主導権を握っているのだが、果たして2400ccのGR86/BRZと2000ccのロードスターはどちらが速いのか?
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というわけで、両モデルを乗り継いできたチャンピオン経験者たちに、各モデルの特徴をホワイトボードに書いてもらったうえで、それぞれの○と×を語ってもらった。
まず、ロードスターとGR86/BRZの両モデルでの参戦経験をもつドライバーとして、真っ先にイメージされるのが、2021年から3年連続でPN3クラスでトップに輝いているユウ選手だといえるだろう。
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ユウ選手は、これまでロードスターを武器に3連覇を果たしたほか、2025年はGR86に主力モデルをスイッチしており、第3戦から第5戦にかけて3連勝を達成するなど、両モデルを知り尽くしているドライバーのひとり。
そんなユウ選手が、ロードスターの最大の武器として挙げたのがトラクションで「前後の軸重の配分や足まわりの形式が影響しているのか、ロードスターは圧倒的にトラクションがいいですね」と語る。
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気になる弱点については、「ハードトップでリヤの頭の辺りに重量物を感じます。それをセッティングで手なづけていきたいところなんですけど、なかなか癖がありました。高速スラロームの後のターンみたいなシーンではブレーキで姿勢を崩しやすい。ロードスターはブレーキング時のリヤの内輪の浮きに敏感で、ブレーキのバランスが出ていなかったり、コンディションが悪かったりすると止まらない感じがありますね」とのことだ。
一方、GR86の最大の武器について、ユウ選手は「ロードスターと比べるとパワーがありますね。あとブレーキもよくて、車両重量はGR86のほうが重いけれど、路面が荒れていたり、雨が降っているとGR86のほうが4輪のブレーキで止めているな……という感じがします。実際に測ってみないとわからないけれど、慣性マスが上のほうにあると感じるロードスターと違って、フィーリング的にはGR86のほうが低重心のような気がします」と分析。
さらに、GR86の弱点についてはトラクション不足を挙げており、「トラクションを出すことが難しい。昔のシルビアみたいに乗りやすいけどトラクションがないよね……という感じなので、ドライバーによっては、コーナリングはアンダーステアの方向に降って、トラクションを重視したセットアップに仕上げている人もいますね」とのことだ。
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そして、ロードスターとGR86のどちらが速いのか……という質問に対してユウ選手は、「コース設定次第で、ターンのようにゼロスタートから立ち上がるシーンが何回あるかで変わってきます。ゼロ加速からのターンが多ければ多いほどロードスターに分があるし、ターンを立ち上がってアクセルを踏める時間が長ければ長いほどGR86のほうが速いと思います」と回答。「昨年まではロードスターじゃないと勝てない……みたいな雰囲気だったんですけど、僕自身はコース設定次第だと思っていたので、予想どおりの傾向になっていると思います」とユウ選手は語る。
ちなみにユウ選手に初心者におすすめしたいモデルを聞いてみると、「これからジムカーナを始める人には、ロードスターはミッションが弱かったり、スペアタイヤが積載できないとか、走行以外の部分で競技を続けていく難しさがあると思うので、GR86のほうがやり易さはあると思います。それにGR86はエンジンのパワーがあって気もちいいし、PNクラスで参戦する場合、ハイグリップラジアルを装着することはないですからね。タイヤのキャパシティとエンジンのパワーがちょうど釣り合っているので、GR86のほうがタイヤのピークを引き出しやすいと思います」と説明してくれた。