【試乗】踏めば狼・緩めれば羊! ボルボ史上最高加速を誇る「EX30 ウルトラ・ツイン」はバカッ速だけどジェントルな二面性を楽しめるコンパクトEV (2/2ページ)

快適性も高く電動モデルらしく環境にも配慮

 20インチの超扁平タイヤを履くクルマにありがちな硬質さは、このモデルにはない。ビロードを敷いたような路面感覚が伝わり、突き上げは丸められて乗員に届く。

 ステアリングは正確そのもの。初期応答はシャープだが、決して神経質ではない。むしろ北欧の森を滑るスキーのように、自然体でラインを描いていく。小さなボディに収まったその身のこなしは、プレミアムコンパクトの名にふさわしい。

 試しに強引に追い込むと、トリッキーな挙動を垣間見せることもある。しかしそれは、むしろ限界を知る楽しみの一部であろう。そもそもEX30は、サーキットでテールを振りまわす類のクルマではない。都市の喧騒を抜け、郊外のワインディングを駆け抜ける。それがもっとも自然な舞台だ。

 内装は徹底して簡素だ。センターディスプレイ1枚に機能を凝縮し、物理ボタンは極力排した。パワーウインドウのスイッチは、センターコンソールにただ一対あるだけだ。ドライバーとパッセンジャーは、その一対を共有することになる。さらに付け加えるならば、リヤのウインドウもその一つで操作することになる。まずはフロントかリヤを選択してから、操作することになる。

 いやはや、多少不便ではあるけれど、それはコスト削減による利益確保のためではなく、環境的な配慮なのだ。

 ちなみに、EX30のインパネやドアの内張には、プラスチックのチップを混ぜ込んだ素材が使われている。廃材を利用しているのだ。これとてもコスト削減ではない。というよりむしろ、廃材利用のほうがコストがかさむ。つまりこれも環境への配慮なのである。「自然と共に生きる」という北欧の思想が、キャビンの隅々に宿っているというわけ。再生素材の採用は環境対応であると同時に、意匠美の一部でもあるのだ。

 試乗を終えたとき、ふと「EX」という語の多義性を思った。エクストラ、エクスペリエンス、そしてエクスペリメント。車体はコンパクトだけれど、思想は地球規模に大きい。


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木下隆之 KINOSHITA TAKAYUKI

レーシングドライバー

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