【試乗】ここまで熟成させたボルボに敬礼! 質感もハンドリングも向上した8年目のXC60はまさに円熟の域 (2/2ページ)

滑らかで質の高いドライブフィール

 走ってすぐに、「あれ、違うな」と感じるのがエンジンサウンドだ。従来は2000〜3500rpmのもっとも多用する回転域で、燃焼音の影響だろうザワザワしたエンジン音が届いていた。

 新しいエンジンはその雑味がなくなり、クリーンに6200rpmのトップエンドまで吹け切る音質の滑らかさが心地いいのだ。同時にモーターがごく低回転、低速域からアシストするため、アクセルを踏むと瞬時にエンジントルクだけの力ではない、応答性に優れた加速特性がまるでBEV、つまり電動車のよう。ヒトの感性に従うので、ストレスを感じない。しかし、同時にエンジン音の存在がBEVではないことを知らせてくる。あらゆる音の侵入を抑えた室内の静粛性も高まっている、といえる。

 これまでXC60はモーター走行も可能なストロングHEVの「T6」に乗ることが多かった。なので、エンジン主体の「B5」マイルドHEVは、正直にいうとストロングHEVに比べるとワンランク下の存在に思っていた。ところが、新エンジンとマイルドHEVの組み合わせは、エンジン車でありながら発する音質は滑らかで、回転を引っ張り上げてもまったくストレスのない滑らかさで走行する。それは8速ATが意図した加速力と速度の伸びのよさもじつに素晴らしいと再認識した。

 ボルボは無用な操作によるミスをさせない、という方針から、ミッションをマニュアル操作するステアリング裏のパドルを廃止した。しかし、B5にはシフトレバーにその機能が残る。クリスタルのシフトレバーをDレンジからもう一度下にするとマニュアルモードが選択できる。その状態でシフトレバーを左右にクリックすることで変速操作になる。左にクリックするとシフトダウン、右クリックはシフトアップと、走りにメリハリが生まれるだけではなく、回生ブレーキの強弱を調整するのにも使える。

 ハンドリングは、4WDを感じさせないほどタイトコーナーで自在に曲がる。とくにタイトコーナーでノーズから内側に巻き込むように曲がるこの感触も素晴らしい。サスペンションは、調整機能をもたないコンベンショナルな金属スプリングとその反力に合わせたショックアブソーバの組み合わせ。

 これが低速から細かな荒れをいなし、凹凸を滑らかに吸収して乗り味に貢献。高速は直進安定性の高さと旋回中のボディ姿勢もいい。ボディのロールは、ノーズをわずかに下げるダイアゴナルロールではない、平行ロールだと身体に感じられる。

 ミドルクラスSUVであるXC60。同一クラスの他社モデルに対して、車格感の高さのわりに割安感があるのがボルボだと思っているが、試乗車のXC60 Ultra B5 AWDの価格は税込み879万円! 試乗車は39万円のBowers & Wilkins製オーディオと約20万円のドライブレコーダーがオプション装着されており、950万円!

 クルマの完成度は非常に高い。年月を増して熟成された感が十二分に感じられる。世界の物価上昇にまったく対応できていない日本人の所得を改めて嘆かわしく思う。

桂 伸一が新型ボルボXC60に試乗


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