いいクルマってだけじゃ売れない! 日産が利幅の大きいエルグランド&パトロールで狙う高収益化に立ちはだかる「売り方」の壁 (2/2ページ)

軽自動車の販売を初めてから日産は変わった!?

 日産ももちろん同様の商売を上級車では進めてきたのだが、転換期は日産が軽自動車を扱うようになってからといっていいだろう。売り始めた当初は慎重だったのだが、しばらくすると上級車を売っても軽自動車を売ってもセールスマージンの実績カウントが変わらなくなったそうだ。そうなると軽自動車のほうが圧倒的に売りやすいので、セールスマンの多くは軽自動車ばかりを売るようになったと聞いている。

 日産は2002年にブランド初となるスズキからのOEM(相手先ブランド供給)車となる量産軽自動車のモコを発売している。当時はミニバンがいま以上によく売れていた時代でもあり、日産系ディーラーの店内も現役子育て世代向けのファミリームード溢れるものとなっていった。すると、それまでセドリックなど上級車を乗り継いできたユーザーのなかからは、「上級車を買う雰囲気ではない」と感じ、他銘柄(他メーカー/おもにトヨタ)へと流れるようになったのである。

 そのようなこともあったのか、エルグランドは3代目となったいま(本稿執筆時点)でも細々と販売継続しているが、セドリック、グロリア、ローレル、セフィーロなど、かつての日産花形モデルが次々と終売となり、いまではプレジデントすらラインアップされていない。3代目エルグランドも自販連統計によると2025年1月から9月の累計販売台数でも1275台(月販平均約212台/ちなみにアルファードは6万5975台[月販平均1万台強])となっている。

 もちろん、“日産が新型エルグランドでアルファードに迫る”といった表現もできるのだが、アルファードはモデル自体の魅力以外にも、以前ほどではないものの高い再販価値を維持している。そして、クラウンからアルファードへ管理顧客を誘導し、クラウンには新しいキャラクターを与えて、数タイプ用意してシリーズ化させるなど、時代の変化にも対応させている。もはや、トヨタで売れている上級車に近い車種を投入すればそれでいいというだけではなくなっているのである。

 気になるのは日産系正規ディーラーの販売力である。2002年に軽自動車を扱い始めてから日産上級車の販売不振そして終売が相次いだというのをベースとすれば、すでにかなりの経験を積んだベテランでも積極的に上級車を販売した経験がないことになる。

 また、すでに日産上級車に乗っているユーザーから販売促進をかけるのも常道となるのだが、そもそも上級車に乗っているユーザーも少ないだろう。セレナユーザーをターゲットにして、エルグランドへのステップアップを勧めるという流れも考えられるが、アルファードでは3代目で残価設定ローンを組んで購入したユーザーあたりは負担が大きすぎて継続ローンが組めないとして、車両を処分してノアやヴォクシーなどへダウンサイズして乗り換えるケースも目立っているようなので、慎重な対応が必要となるだろう。

 パトロールに至っては、そもそも日産で過去にはサファリぐらいまで遡らないと国内での同クラス日産車が思い出せない。

 ランドクルーザーはまさに年単位というか、納期がいつになるかわからないなかでも、それを待ってでも乗りたいというひとが発注している。そこにはクルマの魅力もあるが、もはや資産と呼んでいいほど日本国内だけではなく世界中で高いステイタスを確立していることも大きいだろう。

 エルグランドやパトロールは、一般的な量産車とは少々売り方が異なるカテゴリーとなってくる。華々しくデビューして話題となるだけではなく、どのようなセールスプロモーションで販売していくのか、筆者にはそのほうが大変気になっている。


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小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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