庶民車のビートルを魔改造! リムジン化した通称「ロールスワーゲン」はハリウッドスターも虜にした1台だった (2/2ページ)

ハリウッド俳優も使用した名車

 前述のとおり、車体は5mを超え、ホイールベースも1m延ばされるという大改造が始まり、車重の増加に対応すべく1.5から1.6リッターのフラット4エンジンへと換装。この際、ウェーバーの48DCOEへとキャブレターを変更、あわせてワンオフのエキマニも装備されています。そして、サイズこそ公表されていませんが、リヤホイールも車重とトルクを受け止めるべくワイドリムへと変更されました。

 また、運転席のインテリアは伝統的にノーマルが踏襲され、レザートリムを採用。一方で、リヤコンパートメントはイングリッシュブロードという高級な布地でシートを覆ったほか、マホガニーを使ったパネルやシャンパンキャビネットなど豪華絢爛。リムジンでお約束の仕切りガラスも電動システムを採用するなど、なるほど宣伝文句で「ロールスワーゲン」と呼ばれたのも納得です。

 1970年にロールスワーゲンが完成すると、ノイマンは3万5000ドルのプライスタグをつけて展示しました。場所柄、ハリウッドスターの目にもとまり、なんとジョン・ウェインがアカデミー賞の送迎車に使ったほか、ロールスワーゲンの評判を聞きつけた有名人がたびたび利用したのだとか。

 ともあれ、ノイマンは1972年にディーラーの経営権とともにビートルのリムジンを売却しています。買い取ったのはVWのアメリカ法人で、1977年に至るまでロールスワーゲンを宣伝材料に使っていたのだとか。その後、VWアメリカはロールスワーゲンをニューポートビーチのVWディーラーに売却。ディーラーの経営者はジョン・ウェインの親友だった人物とされ、購入はジョン・ウェイン本人たっての希望だったという噂さえありました。アメリカの親父と慕われた名優にしては、クルマの好みがポップでむしろ微笑ましい気もします。

 そんなエピソード満載のロールスワーゲンですから、後年オークションに出品された際も大きな話題となりました。好コンディションだっただけでなく、CDデッキや5つのスピーカーが追加されるなど、アップデートされて商品性はさらに向上。そのため、落札価格は驚きの33万5000ドル(約5000万円)と、当時の価値をそのまま反映したかのような金額となりました。本家ロールスロイスのリムジンも凌ぐような人気は、さすがアメリカで愛されたビートルといったところでしょう。


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石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

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