間違った操作はクラッチを痛める原因に
同様に、スポーツドライビング映像などで足もとの操作を映すときは、シフトチェンジの前後で左足がクラッチペダルを操作する瞬間を切り取ることが多い。こうした映像ばかり見ていると常に左足をクラッチペダルにのせているように思ってしまうかもしれないが、常時クラッチペダルに左足をのせておくのはオススメしない。
たしかにクラッチペダルに触れない位置で、いつでもクラッチペダルを操作できるよう左足を準備しておくのは素早い対応ができるし、それ自体はクルマに悪影響を与えることはない。しかしながら、左足がクラッチペダルを少しでも踏んでいる状態は、「クラッチの引きずり」といってクラッチを傷めるNG行為とされている。
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シフト操作を伴わない走行中にクラッチペダルを踏んでしまうと、半クラッチといって駆動系をわざと滑らせることになってしまう。そうすると、クラッチディスクの摩擦材が減ってしまい、クラッチ全体のライフが短くなってしまうからだ。
基本的にクラッチの摩擦材は駆動力をつなぐときに消耗するわけで、自らクラッチ交換のサイクルを短くする必要はない。厳密には、クラッチペダルの遊びの領域であればクラッチディスクは傷まないかもしれないが、その領域を微妙にコントロールできるのでなければ、シフト操作をしないときは左足をフットレストなどに置くといいだろう。
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シフトチェンジのとき以外はクラッチペダルの操作は不要と書くと、「ドリフトなどではキッカケづくりや姿勢コントロールのためにクラッチペダルを操作しているのを知らないのか」という指摘があるだろう。
たしかに、ドリフト的なドライビングでは、クラッチ蹴りといってアクセルを踏んだ状態で突然クラッチを切ってつなぐことでリヤタイヤの滑り出しを生んだり、連続してペダルを揉むようにクラッチ操作することで駆動力やパワーバンドを適正化して、ドリフト姿勢をコントロールするといったテクニックは存在する。
ただし、これらはドリフトというある意味で特殊な走らせ方において必要なテクニックであって、駆動系にかかる負担は大きい。公道走行で真似をするのは百害あって一利なしだ。
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レースのスタートシーンやドリフト走行で見かけがちな、エンジン回転を上げて、スパーンと唐突にクラッチを繋ぐようなドライビングもクラッチの寿命を縮めてしまう。
愛車を大事にしたいのであれば、スポーツドライビング映像を安易に真似するのではなく、あくまで極限の状態に適した運転であることを念頭に置いて、そうした映像を楽しみたい。
基本的に、発進時にはエンジン回転をあまり上げないようにしてクラッチをつなぎ、加速中のシフトアップにおいては半クラッチの時間を短くするよう素早くつなぐとクラッチは傷みづらい。クルマを大事にしようと慎重になりすぎて、半クラッチを多用してしまう人もいるようだが、そうした運転はクラッチディスクの消耗を早めてしまいがちだ。
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また、減速時のシフトダウンでエンジン回転を合わせずにシフト操作をすると、エンジン、クラッチともに負担がかかるので、初心者は無理にシフトダウンしないことをオススメしたい。最初のうちは、ブレーキで減速して停止する前に余裕をもってニュートラルにするようにするといいだろう。