コラムシフトのメリットとは
では、なぜ、そもそもコラムシフトが主流であったのか?
ハンドルの近い場所で操作できるため、余分な体の動き(手を床近くまで降ろすなど)をしなくても、素早く操作できる。その操作した変速位置を、視界の隅でとらえられる。シフトレバーがステアリングコラムにあることで、座席を広く利用でき、たとえば、ベンチシートのように運転席と助手席の区別なく座席を設けられ、3人掛けも不可能ではない。また、運転席と助手席それぞれへの横移動が自由にできる。要は、広く快適で融通の利く室内にできる。それは、道具の合理性の追求に当てはまる。
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1990年代になって、日本でもミニバンが流行るようになり、その合理性からコラムシフトが復活した。その後、バイ・ワイヤー技術といって、シフトレバーから変速機へ、物理的なつながりがなくても、操作を電気信号に変換し、その先の機器を動かせるようになった。信号を使った配線での操作という意味で、バイ・ワイヤー(配線による)と名付けられている。
こうなると、そもそもシフト操作に対する考え方も新しくなる。象徴的なのが、レバーではなくスイッチ操作で、電気自動車(EV)などに採用されはじめている。
その前の段階でも、コラムシフトとフロアシフトの中間的な存在として、インパネシフトという手法が登場した。メーターなどのあるインストゥルメントパネルの中央にレバーを設置し、それで操作を行う。ハンドル近くにレバーがあるので、手を大きく動かさなくても操作できる。それでいて、コラムシフトと違って見栄えはフロアシフトのようにスポーティな印象をもたらす。あるいは、新しさという点で先進的に見えるかもしれない。
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バイ・ワイヤーの技術によって、設置場所はどこでもよくなり、操作の手法もレバーにこだわらず、スイッチでもいいし、回転式のダイヤルでもできるようになった。
一方、メルセデス・ベンツはコラムシフトを復活させた。欧州でも自動変速が前提になってくると、走行中の変速操作が不要になるためだろう。BMWは最初のEVであるi3にコラムシフトを採用し、米国のテスラも当初はメルセデス・ベンツと同じコラムシフトを用いていた。現在は、最新のモデル3でナビゲーション画面を活用したタッチ操作としている。
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まとめると、単に流行り廃りというより、操作のしやすさはどこにあるか、合理的な室内空間に如何に貢献できるかにより、シフトの位置や手法が変化したといえる。