意外なほどのイージードライブに驚き
さて、いよいよ「試走」だ。手渡されたプロポが筆者得意のスティック式なのはありがたい。右のスティックを左右に倒すとラダー=ステアリング機能。左のスティックはモーターコントロール用で、中立から上が前進、下は後退。スティックを中立から上に倒してゆき、最大限上げるとアクセルは全開になる。もちろん、中立からわずかに上げるとジワッと動き出すファジー制御は、芝を傷めないよう、駆動力を一気に加えないためだ。
走行場所は本田技術研究所(和光)の屋上にあるフットサル用コートの人工芝。投擲物でもっとも重いハンマーは7.26kgで円盤が2kg。槍投げの槍は恐ろしく軽い800g。長さはあるが、ここまで軽量であれば長尺モノだが重量バランスになにも影響は出ないだろう。
ジワリと動き出したゼロRCカーは、なるほどRC初心者の誰が操作しても同じように走行できる。つまり、直進安定性が極めて高い。重量バランスを悪化させるであろう、最重量物であるハンマーを背負って走ってみても、空車の状態と何の変化も感じないレベルで走行する。
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実際の走行距離は数百mに及ぶから、対策済みとはいえ雨風が操縦性には影響を与えるのかもしれない……と想像する。最高速の25km/hまで出すことなくスタッフ、カメラマンをLiDARが感知してスロー走行、あるいは停止の安全制御を繰り返しながら走る。
コーナリングは、円旋回を続けても必ずしも同じ軌跡を通るわけではないが、RCカーとしては常識の範囲内。そう、操縦インプレはRCカーとして誰が操縦してもクセなく走行できる仕様で、これこそが重要だ。
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4分の1スケールでゼロSUVを間近で眺めると、「ほう、リヤまわりはこうなっているのか」と細かな造形がわかり、同時に愛着がわく。実車そのものを縮小したボディは、3Dプリンターで子会社の工場「ホンダ太陽」が担う。こうして完成したゼロRCカーは本番1週間前に、「ようやく行けるかな!?」 と思える状態になったという。
トイRCで操縦を鍛えた、開発陣を含むドライバーは全10名が招聘された。ドライバーとインフィールドにいる第2、第3の目から助言を受けながらの1回のドライブは約15分。それは投擲物を回収してもとに戻すまでのワンクールで交代する。集中力を維持するには妥当な時間設定だと思う。
全7台が製造されたゼロRCカーは本番に4台、スペア2台、1台は大会の最寄り駅である千駄ヶ谷駅に展示され、見て、触ってもらうことで人気を博した。その状況を目撃した開発陣は、「自分たちが作ったモノでみんなが笑顔になるのを間近で見られて、じつにやり甲斐のある仕事でした」と述べる。
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未知のモノに挑戦して、本番をつつがなく終えたことは若いエンジニアの大きな自信になっただろう。ものづくりを評価されるうれしさを体感して、それが今後の商品開発につながる。ゼロRCカーを通じて、こうした取り組みにも真剣なホンダスピリットを身近に感じられてうれしく思えた。