この記事をまとめると
■ホンダのタイプRシリーズが登場する以前に「FF最速」と呼ばれていたのが三菱FTOだ
■2リッターV6に日本初のマニュアルモード付ATを組み合わせて先進性にも長けていた
■クーペ市場の縮小と厳しくなる衝突安全基準に適応できずにFTOは1世代で消滅した
日本車初のスポーツモード付きATで一斉を風靡
前輪駆動のホットモデルといえば、シビックやインテグラに代表されるホンダのタイプRシリーズが知られるところだが、タイプR登場以前に、FFスポーツの頂点ともいわれていたモデルが存在していた。それが1994年に登場した「三菱FTO」である。
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このFTO、車名は1970年代に存在していたギャランクーペFTOの名前を継承しているが、「Fresco Turismo Omologato」というイタリア語が由来となっていたギャランクーペFTOに対し、こちらは「Fresh Touring Origination」と異なる意味が与えられていた。そのため、FRレイアウトであったギャランクーペFTOから車名こそ引き継いでいるものの、異なるキャラクターが与えられていたというワケだ。
そんなFTOは、プラットフォームこそ当時のミラージュ系のものが流用されていたが、メインとなるエンジンは2リッターのV型6気筒(直列4気筒もラインアップ)で、トランスミッションには5速MTのほか、スポーツモードを備えた「INVECS-II」が与えられていたのがトピック。
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このINVECS-IIは、いわゆるマニュアルモードを備えたATとなっており、いまでこそ珍しくないものだが、じつはこのFTOに搭載されたものが日本車としては初のマニュアルモード付ATとなっており、当時はまだまだMT車が主流だったこのジャンルの車両において、AT比率の高いモデルともなっていたのである。
そして、トップグレードに搭載された2リッターV6エンジンはDOHC MIVECエンジンとなっており、その最高出力は200馬力とスポーツモデルとしても十分評価できる高出力となっていた。
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さらに足まわりもV6を搭載するにあたって強化されていたため、かなり切れ味鋭いハンドリングを実現していたため、当時はFF最速と評する声も少なくないモデルに仕上がっていたのだ。
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もちろんデザイン面でもFFスペシャリティクーペとして文句なしにカッコいいといえるスタイルに仕上がっており、そのクルマとしての完成度の高さは1994年の日本・カー・オブ・ザ・イヤーに輝いたことからも伺い知ることができるだろう。
しかし、2000年近くになってくるとクーペモデルの市場自体が縮小し、年々厳しくなっていく衝突安全基準に対応する必要も出てきたことで、2000年夏ごろに生産を終了し、後継車種が登場することもなく1世代のみで終売となってしまった。