より安全なクルマを選ぶなら注目! 「フルラップ」「オフセット」2つの衝突試験の中身 (2/2ページ)

安全なクルマを選ぶためのひとつの指標であることは確か

 現在、自動車アセスメントにおいて実施されている衝突実験の条件は、フルラップ衝突が55km/hでコンクリート製の障壁(バリア)に正面衝突させるというもの。一方、オフセット衝突は64km/hで運転席側40%をアルミハニカムに前面衝突させるという条件で実施されている。

 実験速度だけみるとフルラップ衝突のほうが甘く見えるかもしれないが、対象物が異なる。フルラップ衝突で用いるのがコンクリート製の壁であるのに対して、オフセット衝突では乗用車に見立てたアルミハニカムにぶつけている。単純化するならば、フルラップ衝突は建造物や擁壁に当たるケースを想定しており、オフセット衝突は乗用車同士の事故を想定していると理解するといいだろう。

 なお、衝突実験の狙いとしては、フルラップ衝突はシートベルトやSRSエアバッグによる乗員保護性能を評価するのに適しているとされる。一方、オフセット衝突は車体変形による乗員への加害性を評価するのに適している。

 とはいえ、オフセット衝突実験は前面の40%部分をぶつけるという条件であって、実際に起きる事故のほんの一部しか再現できていないことも事実。オフセット衝突に特化したボディ設計によって、表向きの衝突安全性は上がっていても、リアルワールドで安全なボディとは限らない。

 どんなに進化したシミュレーション技術でも、千差万別の事故ケースすべてを再現することは難しいわけで、衝突実験が完璧とはいえない。それでも衝突実験の結果から安全と思える車種を選ぶことは、クルマ選びにおける自己防衛になることは確実だ。


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山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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