この記事をまとめると
■ホンダの新型CR-V e:HEVがタイ生産の逆輸入車として日本上陸を果たした
■すでにホンダは中国やタイやインドで生産されたいくつかのモデルを日本に導入している
■日本でホンダがラインアップする普通車のうち3分の1弱となる4車種が輸入車だ
タイ生産となるCR-V e:HEVの導入を開始
日本におけるホンダのフラッグシップSUVであるCR-Vに待望のe:HEVが追加された。これまで歴代のCR-Vを乗り継いできた生粋のマニアにとって朗報となったのはいうまでもないが、日本では現行型にe:FCEVしかなかったことで、CR-Vを次期愛車候補からはずしていた人にとっても選択肢が広がったのではないだろうか。
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実際、ホンダにはCR-Vの復活を熱望するたくさんの声が届いていた(e:FCEVはすでに約1年前に復活していたのだけれど……)という。だったらなぜe:FCEVの導入時にe:HEVもラインアップしなかったのかをホンダの広報に直撃してみたけれど、それに関してはまったく何も教えてくれなかった。そのあたりの事情はいろいろあるのだろうけど、今回こうしてタイから無事に日本に輸入されることになったのは非常に喜ばしい。
と、ここでふと気がついた。今回のCR-V e:HEVはタイ工場で生産されたものを日本に輸入している輸入車なのだ。ここのところホンダは、輸入車の販売に積極的だ。ミニバンのオデッセイは中国製だしアコードはタイ製でWR-Vはインド製。そしてCR-Vは、e:FCEVがアメリカ製でe:HEVはこれまたタイ製なのだ。
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そして、これらすべてのモデルのデキがかなりいい、と思う。幸いなことに、CR-V e:HEV以外のすべてのクルマに試乗したことがあるけれど、いずれも輸入車ならではの大味さみたいなものは感じたことがない。車両によっては安っぽさを感じたことはあったが、これはそもそもその車両がそういうコンセプトで企画されたものだから。いずれのモデルも「THEホンダ」といった感じで、ホンダのクオリティコントロールが行き届いていることに感心したくらいだ。
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現状、ホンダが日本で売っている乗用車は19モデル(シビックとシビックタイプRとCR-V e:HEVとCR-V e:FCEVをそれぞれ1モデルとして記載するホンダのHPによる数え方)。このうち6モデルはガラパゴスとも揶揄される日本独自の規格である軽自動車だから当然ながら日本製。それらを抜いた残りは普通車が13モデルで、そのじつに3分の1弱が輸入車になっているというから驚きだ。
世界をマーケットにしているホンダのような大企業であれば、もはや日本市場に固執する必要はないし、販売する国やその周辺の、労働力がより安い国でクルマを造って供給するほうが効率的なのはわかるが、なんだかちょっと悲しい現実に直面したような気がした。
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30年ほど前、旅行でアメリカにいったとき、シビックに乗っているアメリカ人に会った。「ホンダは日本車なんだよ」と自慢気に教えてあげると、そのアメリカ人は「ホンダはアメリカ車じゃないのか、オレは輸入車に乗っていたのか」と悔しがっていた。彼は本気でホンダのことをアメリカ車だと思っていたわけだけど、これがもしもいま現在でのことであれば、自慢気に「ホンダは日本車」といえなかったかもしれない。
あと数年したら、ホンダのラインアップがすべて海外産となっていて、本当にホンダが輸入車ブランドになっていたなんてことがないことを祈りたい。